第878話 精霊たちはマイペース
集団で掲示板のところに集まっていると邪魔だろう、ということで、テオとテオパパのガイシャを残し、ギルドに併設されている食事スペースに移動することになった。
併設だけに、テーブルが六台にカウンターと、あまり広くはない。
食事をしている人はもちろん、すでにお酒を飲んでるような人もいて、空いているのは真ん中のテーブルのみ。
そんなところで精霊の話とかしても大丈夫なのかと心配になったけれど。
「大丈夫だ。防音の結界を張ったから」
ふふんと自慢げに言うエイデン。
エイデンだからな、と呆れつつも「ありがとう」と言っておく。それだけで、エイデンは満足そうなのだ。
テーブルについたのは、私とエイデンと美人なエルフのお兄さん。
猫獣人の女の子たちとライオンの獣人の子は座らずに立ってる。残り二つしか椅子が空いてないから、遠慮して座らないようだ。
「椅子出すから、座って」
私はタブレットの『収納』から、折り畳み椅子を一脚出す。
「そ、それはなんですか!」
美人のエルフのお兄さんが驚いた声をあげて立ち上がる。
「ん? タブレット」
「た、たぶれっと?」
「そんなことよりも、三人も座って、座って」
お兄さんをスルーして立っていた子たちに座るように促す。
そんな彼に、精霊たちが何やら話しかけているが、私のところまでは聞こえない。しかし、何か変なことを言ったのか、お兄さんは徐々に顔が青ざめていき、私とエイデンを見比べてからの……土下座。
「へ?」
あまりのスピードに、びっくり。
それは女の子たちも同様で呆気にとられているし、周囲のテーブルについていた人たちも音は聞こえないはずなのに、こっちに目を向けている。
「い、愛し子様とは知らず、し、失礼しました!」
「あ、ああ、それはどうでもいいから、ちょっと、立って、立って!」
「いえいえ! その上、古龍様にまで助けていただき、フェルメ、感謝の言葉もございませんっ!」
叫ぶように言うエルフのお兄さんには、私の声は届かないようだ。
「ああ、なんということだ! 愛し子様にご迷惑をおかけするなんて! おじい様に殺される!」
「あのね。立ってくれる?」
「どうしよう、どうしよう!」
「……」
どうしよう、は私のほうなんだけど、と思っていると。
「五月が立てと言ってるではないか」
ズモモモモーという効果音が聞こえそうなエイデンの声と同時に、ピヒャッ、と立ち上がるエルフのお兄さん。
――えぇぇ。泣いてるよぉ……。
まさかの、美人のエルフのお兄さん、号泣してる。
猫獣人の女の子たちも、ライオンの獣人の男の子も、エルフのお兄さんの様子に唖然としているし、周りのテーブルに座っている人たちの視線が私たちに集中してる。皆、凄く怖いんだけれど!
「と、とにかく座ってください」
「は、はひ」
今まで精霊たちに『愛し子』と呼ばれていたことはあったけれど、人にそこまでの反応をされたことはなかったので、びっくり。
『まったく、なきむしだなぁ』
『エルフにしてはめずらしいわ』
『サツキはきにしないのにな』
『むしろ、よぶなっていわれたしな』
『なー!』
「あんたたちが、余計なことを言ったからでしょ?」
『えー? だって、あいつがなんでいっしょにいるんだってきくからさー』
『ねー』
精霊たちのマイペースは、いつも通りであった。





