第877話 美人なエルフのお兄さん
ギルドのカウンターのほうへ戻ると、テオとテオパパのガイシャさんは依頼が掲示されているところに立っていた。
ボドルさんたち、『疾風迅雷』の面々はまだ戻ってきていないようだ。
「何かいいのあった?」
二人の後ろに立って声をかける。
「あ、サツキさま」
「お話は終わったのですか?」
「うん。どんなのが出てるの?」
私も掲示されている依頼票に目を向ける。
「やくそう、さいしゅ?」
「え、五月、読めるのか?」
一緒にいたエイデンが驚いた声をあげた。
彼が驚くのも無理はない。いつもならタブレットで『翻訳』をするところを、私が自力で読んだのだから。
こちらの文字がなかなか覚えられなかった私だけれど、単語だけならと、少しずつ覚えていたのだ。
さすがに長文は無理だけど、普段使っている言葉の文字や、数字らしき文字は読めるようになった。地味に頑張った。
「ちょっとはね」
本当にちょっとだから、いばることではないけれど、胸を張ってしまうのは許してほしい。
「薬草って言っても、種類が色々あるよね」
「うん。これは、モギナってかいてあるんだ」
「ほおほお……でも、この時季じゃ厳しくない?」
エイデンに運んでもらった時に見えたケセラノの街周辺は、枯れた野原が広がっていた。
「森の奥だったら生えてるんだよ」
私たちの会話に割り込んできたのは、先程、冒険者ギルドの前で揉めてたエルフのお兄さん。彼の後ろには猫獣人の女の子二人と、ライオンの獣人の男の子。
エルフのお兄さんは、やっぱり美人さんだ。
「……へぇ。そうなんだ」
私は感心の声をあげて、掲示板のほうへ目を向ける。
うちの山は精霊たちのおかげで季節関係なく薬草が生えているので、困ることはないけれど、この時期は普通は薬草がなかなか見つからないと、孤児院の子供たちが言っていた。
それを思い出すと、魔の森の木々が青々としていたのは、不思議だ。
――魔素が濃いからかな?
魔物も多いらしいし、だからこその冒険者への依頼なのかもしれないけれど、低ランクの子たちが行っても大丈夫な場所なんだろうか。
「あ、あの」
私が色々考えていると、エルフのお兄さんがエイデンのほうへ目を向け、声をかけてきた。
「先程は助けていただきありがとうございました」
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「ましたっ!」
深々と頭を下げてきた四人に、ちょっとびっくり。
「……邪魔だったからどかしただけだ。お前らに感謝されるいわれはない」
「ちょっと、エイデン」
わざわざ言いに来てくれたのにそんな言い方はないだろうと、無表情に返事をするエイデンの脇腹をつつく。
「それでも、我々は助かりましたから……それよりも……貴女様は」
美人のエルフのお兄さんが、不思議そうな顔で私を見る。
私はなんだろうと首を傾げると。
「なんで、そんなに精霊たちが集まっているのですか? それも、そんな大きな者たちを」
「……あ」
エルフのお兄さんの言葉に、この人は見える人なんだ、と少し驚く。
『ほー、ちゃんとみえてるなんて』
『みどころあるエルフじゃない?』
何人かの精霊たちがエルフのお兄さんを観察しに行く。
「そりゃ、エルフなら見えるものだろう?」
『おや、こえもきこえているようだ』
『こやつ、あのさとのものじゃないな』
『へぇ』
一気に精霊たちの関心が、美人のエルフのお兄さんへと変わった瞬間だった。





