第875話 ギルドマスター、叫ぶ
向かい側のソファに座った熊獣人のジャロさん。私4人分のソファが、ジャロさんにピッタリサイズ。彼のために、このサイズのソファを作ったんじゃないか、と思うくらいだ。
「で、ネドリからもらった連絡じゃ、アースドラゴンの生息地があるとかなんとか。どんな冗談かと思ったんだが」
「ああ。エイデン様が確認している」
「……エイデン様?」
ジャロさんは訝しそうな顔をする。
「まさか。こいつは、いや、この方は、そのぉ、お貴族様なんてことは……」
さすがに身分制度のある世界。それにエイデンの外見もいわゆる平民らしくはないかもしれない。
「ああ、違う、違う」
「なんだよ、ビビらせるなよ。だったら、なんで『様』だなんて。確か、エイデンはAランクだったと思うが、貴族だなんて聞いてなかったからな」
ジャロさんが焦りながらネドリさんに言う。
エイデンのAランクを把握しているあたりは、さすがギルマスなのだろう。
ただ、元Sランクの冒険者がへりくだった言い方をするんだから、そう勘違いするのも当然だと思う。
「貴族なんかよりも、尊い方だ」
「は?」
ジャロさんの頭の中では?マークが飛び交っていそうだ。
「そんなことよりも、アースドラゴンだろ」
エイデンが話を戻す。
「あ、は、はい。えーと、一応、ネドリからの連絡だったから、お前の村から一番近い、ギルドの支部のある町には連絡はいれた。だがなぁ、あの町には高ランクの冒険者パーティはいない。だから調査依頼は出してはいるが、報告が来るのはまだ先だが……本当にいるのか? アースドラゴン」
チラチラエイデンを見ながら、ネドリさんに話しているジャロさん。
たとえネドリさんからの話でも、そう簡単には信じてはもらえないか。
「五月、タブレットに入ってるよな」
「え、何のこと?」
「ほら、ドラゴンの鱗」
「ああ、記念に貰ったやつね」
アースドラゴンを解体している最中に、せっかくだからと渡されたのだ。
ちなみに、鱗だけではなく、ドラゴンの血も何かに使えるかもしれないから、と瓶に入れたのをオババに持たされている。(遠い目)
「ド、ドラゴンの鱗だと!?」
「はい、ちょっと待って下さいね」
私はバッグからタブレットを出して『収納』から鱗を取り出す。私の顔よりも大きな鱗を取り出して見せると、ジャロさんは驚きで大口をあけて固まっている。
「ああ、あと、わかりやすいのは画像かな」
実はタブレットの『鑑定』用に使うカメラ、普通に画像も保存できるのだ。
「えーと、これなんですけど」
私はタブレットの画面いっぱいに、村のみんなで解体している画像を見せた。
ジャロさんは、口を一層大きくあけて、ついでに目もひんむいている。
「これとか、これとか、ああ、これもいいかも」
ドラゴンの顔のドアップとか、爪を手にして喜んでるヘンリックさんとか、横たわるドラゴンの周りを子供たちが走っている画像を見せていく。
途中で、ハッと正気に戻ったジャロさん。
「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁ!」
ジャロさんの大きな声が部屋中に響いた。





