第871話 ケセラノの街にやってきた
私はエイデンの誘いにのって、ビヨルンテ獣王国のケセラノの街にやって来た。
さすがに『ちょっと』という距離ではなかったので、翌日にしてもらった。だって、絶対に日帰りにはならないだろうと、思ったから。
それは正しかったようで、ケセラノの街に来たのは私とエイデンだけではなかった。
今回の同行者は、ネドリさんとガズゥ、テオ、テオパパのガイシャさん、それにボドルさんたちのBランクパーティ『疾風迅雷』の面々だ。
ボドルさんたちのところには、まだ一歳にもならない子供たちがいるので、リリスさん、ケイトさんのママさんたちはお留守番だ
大人数だったこともあって、軽トラというわけにもいかなかったので、私の魔道具バリバリの馬車に乗って、古龍姿のエイデンに近くまで運んでもらった。
街の近くに降りたのに騒ぎにならなかったのは、エイデンのおかげである。
ビヨルンテ獣王国にやってきた目的の一つは、冒険者ギルドにアースドラゴンの話をすること。どうやってなのか、ネドリさんがケセラノの冒険者ギルドのギルドマスターに連絡をとったのだけれど、相手側が信じてくれてないらしい。
そんなの私が行く必要がどこにある? と思ったのだけれど、獣人の国というのが気にはなっていたので、ついつい……。
そして、その説明とともに。
「マルも来たがってたなぁ」
「仕方ないだろ。今日は冒険者ギルドに登録にきたんだから」
ガイシャさんがテオの頭を撫でながら宥めている。
今回、テオの冒険者登録をしに行こうということになったのだ。
冒険者ギルドの登録は10歳からなら見習いのFランクから、12歳からEランクで登録できる。ガズゥはすでに12歳になっていて、白狼族の里に行く途中で冒険者ギルドに登録したのでEランクなのだそうだ。
マルは、一人置いて行かれるのを拗ねていたけれど、お土産買ってくると言ったら、納得してくれたそうだ。ここにもチョロいのがいた。
「ふぉぉっ。ケモミミがいっぱい~」
私は思わず心の声が漏れてしまった。
だって、街並みはコントリア王国とあまり変わらないけれど、街中を歩く人の姿が明らかに違うのだ。
人族の姿もチラホラ見えるけれど、圧倒的にケモミミやふさふさ尻尾の比率が高い。
角の生えている牛みたいな獣人もいれば、もこもこした髪の羊みたいな獣人もいる。肌に鱗がついているのは蛇の獣人だろうか。
……蛇でも獣人って言うのだろうか。
うちの村のことを思い返してみると、ほとんどが狼獣人だし、唯一、兎獣人のニコラがいるくらい。
他に見たことがあるのは、グルターレ商会の護衛をしているBランクパーティ『焔の剣』の 熊獣人のマックスさんと、虎獣人のキャシディさんだけだ。
「……凄い。こんなに色んな獣人がいるんだねぇ」
ついついキラキラした目で見てしまうのも仕方がないと思う。
「フン(俺のほうがカッコいいのに)」
隣を歩いているエイデンが少し不機嫌そうだけれど、私は色んな獣人たちを見ているほうが楽しいので気にしない。
「お、見えてきたな。あそこがケセラノの冒険者ギルドだが……はぁ。相変わらずだなぁ」
ボドルさんの呆れた声で目を向けると、建物の前で何やら喧嘩が始まっていた。





