第868話 ログハウスの部屋を見てみよう
ログハウスの中に入ると、ひんやりとした空気とともに、新しい木の匂いがする。
――前のログハウスの木材をリサイクルしてると思うんだけど。
建物が少し大きくなっているし部屋数も増えたから、『収納』にあった新しい木材を使ったのかもしれない。新築のような気分になって、ちょっとワクワクする。
まだ荷物を戻していないから、部屋の中は広々としている。
「うわー」
「広くなった!」
ノワールとマリンが私の後から入ってきた。
確かに、リビングの広さは前のに比べて倍以上になっている気がする。窓も少し大きくなったのか、部屋の中が明るい。
「ねぇねぇ、こっちに部屋がある!」
マリンの声に目を向けると、北側の壁だったところにドアができていて、そこを開けたマリンが目を輝かせている。
一方でノワールはドタバタと階段を駆け上がっていく。
「こっちも部屋が増えてるっ!」
子供たちがキャイキャイと楽しそうに、部屋の中を見て回っている間に、家の中が寒かった私は暖炉に火をくべた。
部屋が大きくなった分なのか、暖炉も少し大きくなった気がする。火の精霊たちのおかげで、すぐに燃えてくれるのはありがたい。
私はタブレットを片手に、それぞれの部屋の荷物を『収納』からだしていく。タブレットの便利さに、感謝感謝である。
新しく建てたせいなのか、それぞれの部屋が少しだけ広くなっている気がする。自分の部屋に荷物を置いていくと、前よりも余裕があるような気がしたのだ。
一通り荷物を出し終えてホッとした私は、階上からログハウスの中を見渡す。
「ちょーっと、リビングが広すぎたか」
テーブルや椅子を置いたり、ラグを敷いたりもしてあるけれど、半分くらい空いている。セバスが暖炉の前に寝転がっていても、余裕がある。
元々、私が一人で暮らすために作ってもらったテーブルだから、あまり大きくはない。椅子も四脚しかないから、この前のようにお客さんが来たら、誰かが立つなり、床に座るなりすることになる。
特に大柄な方々(精霊王様とかエイデンとか)が来たら、テーブルの小ささを実感する。
「どうせなら、もう少し大きなテーブル、作ってもらおうかな」
ポソリと呟く。
せめて六脚くらいの椅子がセットになるような大きめなテーブルなんてどうだろう。ドワーフたちにお願いすれば、すぐに作ってもらえそうだ。
そんなことを考えていると。
「五月! この部屋は私の!」
「だったら、こっちは俺の!」
一階と二階、それぞれに新しくできた部屋から顔をのぞかせたちびっ子二人が叫ぶ。
――あ、一部屋は客間にしようかと思ってたんだけど。
二人のキラキラと輝く瞳の圧に負けた私は、笑顔を張り付かせて頷くしかなかった。





