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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
初春から村は大忙し

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第865話 ジェアーノ王国の酒

 精霊王様たちがお茶をしているところに、エイデンもやってきた。


「なんだ。お前たち。なんで五月の家にいるんだ」

『古龍、生意気だぞ』

「……口元に煎餅のカスをつけて言われてもな」

『確かに』


 気安いやりとりの三人だけれど、身体の大きな三人のせいで、部屋の中は一層狭苦しくなった。


「五月、ジェアーノ王国に行ってきたお土産」


 そう言って、エイデンが空中から12本ほどの大きな瓶の入った立派な木箱を取り出した。瓶の中身はワインだろうか?


「こいつは、ジェアーノ王国の特産品のル・ワサの実でできた酒だ」


 ル・ワサの実というのは、ワサの実に似た別の果実だそうだ。

 ワサの実は北の土地やダンジョンで採れるけれど、ル・ワサの実はジェアーノ王国特有の果実らしい。

 ワサの実は確か、リンゴと梨の中間の爽やかな香りのする果実だったから、似たような実なら、もしかしたら、シードルのようなお酒かも、と、少し期待しながら、ふと思い出す。


「ジェアーノって……ラインハルトくんのところの?」


 一時期、村で保護していたジェアーノ王国の辺境伯家の子だ。ラインハルトくんと、乳母のエメさん、庭師のアルフさんの三人が、帝国からの襲撃からひょんなことから、うちの村にやってきたのだが、そんな彼らが帰国して、もう1年半ほどになるだろうか。

 あの頃は小さな男の子だったけれど、どれくらい大きくなっただろう。ガズゥも同い年だったはずだけど、獣人の成長とはまた違うとは思うが。


「ああ。ラインハルトがちょうど王都の学校へ戻る前に会えてな」


 確か、キャサリンとも同い年だったし、彼女も王都の学園に通っているくらいだ。ラインハルトくんもジェアーノ王国の学校に通っていても当然か。


「村に来たがっていたが、さすがに学校を休ませて連れてくるわけにもいくまい」

「まぁね」

『おい、それよりも、その酒を飲ませろ』


 散々、稲荷さん特製煎餅を食べていた火の精霊王様が言いだした。


「これは五月への土産だ。ヘドマン辺境伯からも、よろしくとのことだったからな」

「へっ!?」

「様子を見に行ったら、持たされたんだ。まだ山ほどあるが、五月はこれくらいで十分だろう?」


 エイデンは今も時々、ドグマニス帝国とジェアーノ王国の国境の様子を見に行ってくれている。ラインハルトくんを気にかけてくれているようだ。

 最近は、帝国も色々とゴタゴタしているらしく、他の国にちょっかいを出す余裕はないらしい。それでも、欲をかく貴族がいないとも限らない。 


「十分過ぎるわ。じゃあ、1本だけ、お二人にお渡しします」

「え」

『おお、話がわかるな!』

『ありがたく頂こう』

「ちょ! だったら、俺が持っているのを渡す!」


 エイデンが慌てて、一本取り出した。


『なんだ。たくさんあるなら、一本と言わず、もっとくれ』

「まったく、精霊王たちは酒飲みばかりだな!」


 呆れながらそう言いつつも、火の精霊王様と水の精霊王様、それぞれに二本渡しているエイデン。おかげで精霊王様たちはホクホク顔だ。


「ほら、さっさと帰れ!」

『冷たいなぁ』

『ほんとだぞ』


 シッシッと手を振るエイデンに言い返しながらも、瓶を抱えた二人はにんまり笑みを浮かべながら、素直にスーッと消えて行った。

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