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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
楽しい冬ごもり
953/959

第848話 元日の訪問者

 ドンドンドン


 新年早々、玄関のドアが勢いよくノックされる。

 

 ――まだ、早くない?


 ベッドからのそりと身体を起こす私。

 ボーっとしながら窓のほうへ視線を向けると、カーテンの隙間からは、薄っすら光が入りこんでいるのが見える。慌てて時計を見ると、八時近くになっていた。

 昨夜はなぜか深夜までエイデンと一緒にお酒を飲み、気が付いたらベッドの中にいる自分に驚く。着替えもせずに寝てしまったようだ。


 ――え、エイデンはどうした?


 私は慌てて、階段を駆け下りる。リビングでは、ちびっ子たちがセバスを枕に固まって寝ていた。ちゃんと毛布も掛かっている様子にホッとする。

 暖炉の火は熾火のようになっていたようで、それほど寒くはなっていない。火の精霊たちが、親指をグッと立てて自慢げにいるので、彼らがなんとかしてくれたと思われる。

 思わず苦笑いを浮かべていると、再び、ドンドンドンという玄関を叩く音。


「はいはいはい」


 部屋の中にエイデンの姿がないのを心配しながら、玄関を開けると。


「あけましておめでとう!」


 ……エイデンが満面の笑顔で立っていた。

 それも、クリスマスプレゼントに渡した、フライトキャップに青地のネルシャツとグレーのセーターの一式を着て。ものすごっく、満足そう。


「え?」

「あ? あれ、ガンジツは、そう挨拶をするのだろう?」


 コテリと首をかしげるエイデン。


「いや、あ、うん。そう。あけましておめでとう」

「うむ」


 嬉しそうなエイデンに、私は呆気にとられる。


「あ、えーと、エイデン、昨夜は」

「ちゃんと城に帰ったぞ? 五月が寝てしまったのでな。ノワールたちに帰れ、と追い出されてしまった」

「あー、そうなんだ」


 中々にジェントルなエイデン。

 それでも深夜に追い返すのはいかがなものか、と思うものの、エイデン(古龍)だし、ひとっとびで城には帰れるし、とも思ったけれど、ちょっと申し訳ない気もしてくる。

 今のログハウスには客間らしいものはない。敷地内に別邸があるからだ。

 またこんなことがないともいえない。ちゃんとリフォームしたほうがいいかな、とチラリと思う。


「まだ、何も用意してないんだけど、それでもよければ」

「構わない。中で待っていてもいいのか?」

「はい、どうぞ」


 私がドアを大きく開けて、エイデンを中に誘っていると、のそのそと白い集団が登場。


「あんたたち、どうしたの?」


 ユキ、スノー、ハク、それにウノハナたち三つ子までがやってきた。


『えっと』

『ほら、いいなよ』

『おすなよ』

『あー、五月、あのね』

「あ、もしかして」


 私の言葉に、皆が皆、目をキラキラさせる。


「お年玉ね?」

『そう!』

『おとしだま!』


 白い尻尾があちこちでブンブン振りまくっている。すっかり巨大な身体になってしまっている彼らなのに、すごく可愛い。


 ――『収納』に贈答用のハム、入ってたはず。


「ちょっと待っててね」

『まつ!』

『まつ!』

『いつまでも、まってる~!』


 賑やかな遠吠えが、山に響いた。

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