第833話 クリスマス効果
冬の手仕事用に手芸用品の店に向かう。ここもディスプレイされている物が、赤、白、緑と、クリスマスモード一色だ。
そんな中、私が向かうのは布のコーナー。あちらでもグルターレ商会のおかげで、それなりに色んな生地を買うことはできるけど、素材とお値段が、私の感覚からしたら合っていないというか。
比較対象がこちらの商品なのだから、それは無理というものかもしれないけど。
「おー、この生地とかいいんじゃない」
ベージュの生地に赤や緑の小花柄の生地のロールに触ってみる。そこそこ厚みがあるので、女の子たちのシャツやワンピースにしてもいいかもしれない。
他にもジーンズの生地やワッフル生地、コーデュロイの生地など、あちらで買えそうにない生地をロールごとカートに載せる。
「レースとかもいいかもね。え、これって刺繍?」
綺麗なインド刺繍のリボンに手を伸ばして感心する。自分ではやらないけど、あちらの女性たちは喜びそうだ。
「わ、綺麗」
まつぼっくりや赤や金色のリボン、ポインセチアの造花など、見事なクリスマスリースに、思わず手が伸びる。
――村のママ軍団あたりが、喜んで作りそう。
似たようなのがあちらにもあるかはわからないけど、村では見たことがない。これは、売れるんじゃないか、と思わず悪い顔になる。
生地以外にも気になった物(毛糸やビーズ、金具等々)を見つけては、ドンドンカートに載せてしまうのは、やっぱりクリスマス効果だろう。
重くなったカートを押しながらレジに向かう。
「……お、お待ちください」
レジの女性が顔を引きつらせて、応援を呼んできた。
――そうだよねぇ。
自分でもやり過ぎたとは思ったけれど、しばらく来れないと思ったら、買い溜めしておきたい。
「ありがとうございました~!」
やり切った感ありありの、にこやかな笑顔の店員さんの声に背中を押されながら重いカートを押していく。
結局、三人がかりで対応してもらった。
でも、それなりのお値段になっていたので、胸を張ってカートを押していく。
――あ、この後、食料品か。
食料品も大量に買うのだ。カートの状況を見ると、載りきらないのは確定である。
私は再び荷物を置きに、駐車場へ向かう。出入り口に近いところに駐車しておいて正解である。
荷物を載せ終えてホッとしていると、そばを白いバンが通って、少し先の駐車スペースに停まった。
降りてきたのはスーツ姿の男性で、その男性はバンの荷室から段ボールを抱えて、ショッピングモールの中へと入っていく。
ここに商品を卸している業者さんだろうか。
――あれ、いいんじゃない?
軽トラのカバーをかけたりしないでいいし、荷室に入れて鍵をかければ荷物を盗られる心配もない。雨の時だって心配はいらない。
大きさも、この軽トラよりも大きい感じで、積載量も多そうだ。
少しだけ近寄って、スマホを取り出し、白いバンをパチリとカメラで撮る。
――小型トラックの件も合わせて、稲荷さんに相談しよ。
私は空になったカートを押して、ショッピングモールの中へと戻る。
さぁ、今年最後の食料品の買い出しである。