第832話 子供服とエイデンへのプレゼント
すでに大荷物になってしまっているので、一度、駐車場へと荷物を運ぶ。軽トラの荷台に載せてカバーをかける。
「まだ載せられるけど……」
思わず独り言を呟いてしまう。この後、モモちゃんたちの服を買ったり、食料も買わなきゃいけないのだ。
最近の買い出しは、いつも大量買いになっていて、荷台もギリギリ。
――小型トラックのほうがいいかな。
普通免許しか持っていないので、大きいトラックは運転できないけど、小型トラックならいけるはず。実力的に運転できるかは微妙なところではあるけど。
――帰りに稲荷さんのところに寄って相談しよ。
再びショッピングモールの中に戻り、クリスマスソングが鳴り響く中、向かう先は二階のフロアにある某チェーン店の子供服の店。
見渡す限り、子供服だらけ。その中でも、冬服の新作がディスプレイされてるのを見て、少しだけワクワク。残念ながら、村にいる子たち全員に、というのは無理なお値段なので、もう少し控えめなものがないかと見て歩く。
「あ、これ可愛い」
「え、これならアマにもサイズいいんじゃ」
「モモちゃんはこれかな」
「ローも、歩けるようになったから、これあたりいいんじゃ」
「あー、ミコルとモコルに着せたいかも!」
ブツブツと独り言を言いながら、子供たちが増えたこともあって、あれこれと手にしてはカートに詰め込んでいく。
気が付けば、やっぱり見事にモリモリになっていて、レジに持っていったら、店員のお姉さんたちが顔を引きつらせていた。
「さ、さーてと、あとは何を買うかなぁ」
婦人服や紳士服の店もあるけれど、こんな洒落ているのを着るような場所はない。
ないんだけど……。
「あれ」
つい目がいってしまったのは、帽子のお店。
その中でもメンズ用の帽子の棚が気になって、フラフラ~、と見に行ってしまった。
「フライトキャップって言うんだ……」
明るいグレー地に耳のカバーがもう一段暗い色になっている。
自分では被らないけど、ちょっとエイデンにどうかな、と思ったのだ。彼が被っている帽子は、私の手編みのひよこ色のニット帽だけだし(遠い目)。
ショッピングモールの中も、ガンガン、クリスマスソングが流れているのもあって、エイデンのプレゼントにいいかなぁ、とか思ってしまったわけで。
ふと値段に目を向けると、なかなかにいいお値段。
目を閉じて考えるけれど、それも一瞬。
「すみません、これ、お願いします」
レジにいた中年男性に渡すと、にこやかに「プレゼントですか?」と聞かれ、素直に頷く。
立派な紙の箱にしまわれて、ラッピングされた帽子を受け取ると、私は再び、店内へ。
どうも、これが引き金になってしまったようで、ついついメンズのお店が気になって入っては出てを繰り返し……結局、青地のネルシャツとグレーのセーターを買ってしまった。
クリスマスソング、怖い。
――何してるんだろ、私。
他にも買わなきゃいけない物があるのに、と苦笑いしながら、私はカートを押して次の買い物へと向かうのであった。