第829話 ホームセンターで買い物しよう
軽トラを走らせる道沿いはすっかり紅葉も終わり、枯れ葉が散っている。雨が降った後なのか、道路にも散らばっていて、滑ってハンドルをとられないようにと集中する。
ラジオをつけて音楽を流すけど、知らない曲ばかりが流れてくる。
――これが、今どきの流行なのねぇ。
そう思いながら、ふと、村では音楽らしい音楽を聞かないことを思い出す。
農作業をしている時や、ホワイトウルフたちの毛梳きをする時、それに宴会になった時に、皆で民謡みたいなのを歌っているのを聞いたことがあるくらいだ。
――そもそも、楽器とかってあったっけ?
小さな太鼓のようなものと、大きな鈴くらいだろうか。その鈴も、私が持ってた熊よけ用の鈴が元になってたはず。
――何か楽器でも買っていこうかな。子供たち用でもいいし。
――ピアノはさすがにないけど、ピアニカとか?
――カスタネットとかタンバリンとか、子供たちが演奏している姿とか、絶対可愛いよねぇ。
そんなことを考えているうちに、ホームセンターが見えてきた。
平日のおかげか、駐車場は待たずに入ることが出来た。それもお店に近いところだ。
ラッキー、と思いながら中に入ると、楽し気なクリスマスソングが鳴り響いていた。
――そうだよねぇ。もう、そういう季節だよねぇ。
入口の真正面にはドーンとクリスマスのツリーや、その飾りなどが売られていて、クリスマスが押し寄せてきてるという感じで、久々の季節感に圧倒される。
クリスマスコーナーを横目に、私が向かうのはガーデンライトの売っているコーナー。
グレッグさんの家の辺りは、ドワーフたちの家に近いとはいえ、村の中とは違い、街灯のない真っ暗な場所になっている。
ギャジー翁に頼めば街灯の一つや二つ、作ってくれそうだけど、ホームセンターで買うガーデンライトと比べると、コストパフォーマンスが悪い。
――それに、光の精霊たちが喜ぶしねぇ。
ソーラーパネル付のガーデンライトを手にとりながら思い返す。
村の中の街灯は、ギャジー翁が手を入れたおかげで、魔石で消費する魔力の効率もよくなった。光の精霊たちもお手伝いをしてくれているおかげもあるだろう。
しかし、彼らがより多くいるのは、私が買ってきているソーラーパネル付のガーデンライト。
おしくらまんじゅうみたいにギューギューになっている姿は、見る人が見れば可愛く感じるのだろうけれど。
――満員電車かよ。
つい、ツッコミたくなる姿ではある。
グレッグさんの家の辺りまで敷地が広がったのであれば、あの辺にも挿してもいいだろう。
最初に買った物も、本来なら寿命がきていてもおかしくないのに、まだ使えているけど、いつ壊れるかわからないし。
以前よりも種類が増えていて、可愛らしいのもあるけれど、グレッグさんの畑の周辺にも挿したいのを考えると、ベーシックなのが一番か。
私は棚に置かれている物をカートにいれつつ、後で在庫がないか確認しようと思ったのであった。