第819話 エイデン航空(仮)、出発
ドゴールさんとマグノリアさんの結婚の話に、村は大盛り上がり。その日の夜は、村をあげての宴になったのは言うまでもない。
そして、商売を終えたグルターレ商会は、ビヨルンテ獣王国へと向かうとのことで、翌日の昼前には出立することに。
昨夜の宴で村人たち(ドワーフとか、ドワーフとか、ドワーフとか)から酒を飲まされまくって、ぐでぐでのボロボロ状態だったドゴールさん。
「マグノリア~! すぐ帰ってくるからなぁ~!」
そんな叫び声をあげながらも、パーティーメンバーに引きずられるようにして、旅立っていった。
見送ったマグノリアさんが苦笑いしていた。
一応、エルフの里までが護衛依頼となっているので、依頼を完遂したら戻ってくるようだ。
何もなければ雪が降り出す前には、村には戻ってこられるだろうとのこと。
ちなみにマグノリアさんの娘のフェリシアは単純に嬉しそう。ドゴールさんも『お父さん?』と呼ばれて、デレデレになっていた。
息子のザックスはといえば、冒険者としてはドゴールさんのことを尊敬してはいても、自分の父親、となると微妙な感じらしい。
思春期は難しい。
「全員乗ったか」
エイデンが馬車の窓から中を覗き込みながら確認の声をかける。
村の広場に置かれているギャジー翁特製の私の馬車。周囲には村人たちが集まっている。
チャーリーたちの体調も落ち着いたこともあって、いよいよ、彼らの村へ向かうことになったのだ。
馬車の中には、チャーリー兄弟と私、ケニーとラルルが乗り込んでいる。
こちらの馬車にしても、かなり上等な部類に入ることもあって、チャーリーたちは落ち着かない。ずっと車内をキョロキョロ見ている。
「本当にノワールたちは上でいいの?」
「大丈夫」
「外の方が楽しいし~」
ちびっ子姿のノワールとマリンが馬車の上から身を乗り出してこたえる。ちなみに、セバスも乗っている。もう、本当になんでもありだ。
「え、だったら、僕たちが外に」
「いや、君たちじゃ無理だから」
ノワールたちだから許される場所なのだ。
私が真面目な顔で止めたら、チャーリーは顔を強張らせ、コクコクと頷いた。
「よし、行くか」
エイデンがそう言うと、周囲にぶわーっと風が舞い上がる。
「え、な、何、何?」
慌てるのはチャーリー。
恐らく、古龍の姿になったのだろう。
『では、あとはたのむぞ』
「はい、いってらっしゃいませ!」
上のほうから聞こえてくるお腹に響くようなエイデンの声に、ドンドンさんが大きな声で返事をすると、ふわりと馬車が浮かんだ。
「え? え? え?」
チャーリーの驚きをよそに、モモちゃんは窓に張り付いて「すごーい、とんでるー」と喜びの声。
「まぁ、まぁ、落ち着いて。お茶でも飲む?」
これからどれくらいで着くのかわからないけど、エイデン航空(仮)なら、すぐだろう。
私はタブレットから、お茶の入った大きめの水筒を取り出した。