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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
四度目の冬支度
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第809話 エイデンとノワールの帰還

 マリンの声と同時に、玄関ドアがノックされる。

 慌ててドアを開けると、ずぶ濡れのエイデンと子供の姿のノワールが立っていた。


「お帰りなさいっ、ちょっと、凄く濡れてるんだけど! 部屋に上がる前に、拭かないと!」 


 慌ててバスタオルをとりに風呂場へ行こうとしたのだけど。


「ああ、すまん!」


 エイデンがその場で魔法を使って二人とも乾いてしまった。


 ――そうだった。そういう便利な魔法があったんだった。


 ……魔法万歳である。


「やっと帰ってこれたよぉ」


 靴を脱いで、トテトテと入ってきたノワールが、私の足にへばりつく。はぁ、と大きなため息をつくくらいだから、相当大変だったのかもしれない。ノワールの頭をよしよしと撫でる。

 それからエイデンへと目を向けると、なんだか悔しそうな顔をしている。その表情に、つい、可愛いと思ってしまった。

 しかし、そんなエイデンでも、少し疲れているように見える。


「エイデンもお疲れ様。よかったら、座って。今、お茶でもいれる」

「ああ。できればコーヒーがいいな」

「わかった」


 ノワールにへばりつかれながら、私はキッチンに行ってお湯をわかす。インスタントのコーヒースティックを使う。最近の定番はコレだ。

 コーヒーの粉末をマグカップにいれて、お湯が沸くのを待つ。


「で、どうだった?」


 テーブルの上の毛糸を片づけてくれているマリンを手伝っているエイデンに声をかける。


「ああ。なんとかガズゥの儀式は終えることができたよ」

「そうなのね! だったら、もう戻ってこられるのかな」

「ビャクヤたちが連れて帰る気満々だったからな。年内には戻れるだろう」


 綺麗に片付いたテーブルに、チョコチップクッキーを盛った木製の菓子皿を出す。ノワールが、やった!と言って、離れてくれた。

 話を聞くと、やはり魔物の存在のせいで、ガズゥの儀式が滞っていたらしい。

 儀式に入る前に、一人で禊のようなことをする必要があって、それが済まないと本格的な儀式に入れないのに、 その儀式の場所に、ブラックヴァイパーの巣が出来てしまって、狩っても狩っても湧いてきていたのだとか。

 その禊の場が、ブラックヴァイパーだらけって、どういうこと、って感じだ。

 大きなのあにょろにょろしているのを想像して、ゾッとする。


「その原因がっ(もぐもぐ)、エイデン様の魔力だったんだから、最低だよね(もぐもぐ)」

 

 両手にクッキーを持って食べるノワール。

 私はその言葉に、思わず「は?」となる。


「し、しかたがなかろうっ」

「しかたがないって(もぐもぐ)いいますけどぉ(もぐもぐ)」

「どういうこと?」


 ジロリとエイデンに目を向けると、ソッと視線を外す。


「エーイーデーン?」

「あう、いや、そのぉ、お、お湯が沸いているぞっ!」


 誤魔化そうとしているのは丸わかりだが、確かにシューシューと沸騰している音がしたので、一旦、追及の手を緩める。

 コーヒーをいれて、彼の前に置く。

 ついでに自分用のコーヒーと、ノワールとマリン用にと、ミルクたっぷりのカフェオレもいれてあげた。


「で、どういうことなのかな?」


 私がニッコリ笑みを浮かべて問いかけると、エイデンは諦めたように、深いため息をついて話し始めた。


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