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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
四度目の冬支度
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第805話 ミエパリーノ商会、退場

 私たちは、ケディシア伯爵家の騎士団で副団長のミゲーレさんたちを連れて、宿舎の敷地の外、防風林の中へと入っていく。

 そこには縄紐で縛り上げられて転がされている、ミエパリーノ商会の連中がいた。皆、一様に目が虚ろになっている。

 周囲にはユキたち、ホワイトウルフが、こいつらを見張るために集まってくれていた。

 騎士たちはホワイトウルフにビビッていたけれど、ひときわ大きなユキを私が撫でてみせると、少しだけ安心したようだった。

 ちなみに、ミエパリーノ商会の連中は一昼夜、蔦に巻かれて、上空で過ごしたようだ。土の精霊がいうには、ギャーギャー煩かったから、ちょっと絞めたらしい。どう絞めたのかわからないけど、翌朝には大人しくなったらしいので、よしとする(遠い目)。

 その後は村人が一応世話をしてくれていたようだけど、公園の古いトイレのような異臭がして、思わず顔を顰める。

 それに気づいたのか、一緒についてきてくれていた人の姿をしたギャジー翁が、魔法で《《色々》》綺麗にしてくれた。


「なるほど。こいつらですね」


 ミゲーレさんが、渋い顔で言うと、その声に反応してミエパリーノ商会のリーダーらしき男が、ハッとした顔でこちらを向いた。


「き、騎士様、お助け下さいっ!」


 ずりずりと芋虫のように身体を動かしながら、私たちのほうへと向かってこようとする。なんだか気持ち悪い。


『煩い』

「ぐえっ」


 ユキが大きな前足でリーダーを押しつぶす。


「ユキ、殺しちゃダメよ」

『むぅ、わかったわ』


 少し力を弱めたのか、リーダーは、はぁ、と大きな息を吐く。


「ん、んんっ、お前はミエパリーノ商会のロクシー・ミエパリーノで相違ないか」


 笑いそうになったのを、咳払いで誤魔化すミゲーレさん。あの『ぐえっ』と声をあげてる姿は、私も笑ってしまいそうになったけれど。


「は、はひっ、お、お願いです、こ、ここから助けてくださひ……」

「お前には、監禁・誘拐、違法魔道具使用の嫌疑がかかっている」


 ミゲーレさんの言葉に、グッと唸るリーダー。


「おい、こいつらを護送車に放り込め」

「はっ!」


 騎士たちの後方に用意されていた護送車は、大きな窓枠に鉄格子を嵌められたもので、中が見えるタイプ。この状態で街の中に入ったら、あっという間に街中に知られるだろうなぁ、と思ったら、ざまぁみろ、と思ってしまった。

 そしてテキパキと動く騎士たち。ずるずるぽんっと、テンポよく護送車に放り込んでいる様子に、思わず感心する。

 

「今回は、ご迷惑をおかけしました」


 深々と頭を下げるミゲーレさん。


「いえ、騎士様たちのせいではありませんし。ああいうのが二度となければ、別に問題はありませんから」


 そう言ってから、ふと、ケイドンの街であったことを思い出す。薬師ギルドとか、冒険者ギルドとか。


 ――ちょこっとチクってもいいよね?

 

 ということで、こんなことがあったんですけど~、と伝えると、注意はしてくれるとのこと。

 ただ、どちらのギルドも伯爵家とは関係なく独立した組織なので、どこまで影響力があるか、と少し心配そう。

 一度、ケディシア伯爵に話を持ち帰るので、また改めて伺ってもいいだろうか、と聞かれたけれど、ちゃんと対応してくれるなら、報告の必要はない、と答えた。

 ちょっと残念そうな顔をされてしまったけれど、実際、もう行かないしなぁ、というのが本音だ。 


「それでは!」


 颯爽と馬を走らせ帰っていく姿は、ちょっとカッコいい、と思ってしまった私であった。


          + + + + + + + +


 ちなみに。

 蔦に上空まで巻き上げられたロクシーたちですが、蔦に思い切り絞め上げられて手足、肋骨、イッてました。

 明け方、地面に降ろしたところを、ギャジー翁がポーションで治して、ドンドンたちが縛って転がしておいたのです。

 そのことは当然、五月は知りません。

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