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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
四度目の冬支度
902/961

第803話 商会をぶっ潰す準備と、ヤる気の精霊たち

 巨大な蔓に巻き取られた男たちを放置して、私たちは一旦、宿舎の一つに入った。

 ブルーベリーのジャムで肉体的にはなんとか復活したエヴィスだったけど、チャーリー同様に酷い扱いだったようで、大柄なドンドンさんを見ただけで、怖がってチャーリーにしがみつく始末。

 可哀想過ぎて、チャーリーにエヴィスが落ち着くまで、この家で身体と心を休めるように言うと、私たちは二人を残し、家を出る。


「……あとは妹さんの救出と、あいつらの商会をぶっ潰してしまいたいね」


 怒りをこめて、グッと両手を握る私。


「ケイドンの街でしたら、私が行ってきましょう」


 名乗り出たのはピエランジェロ司祭。


「ついでに領主様にも、あの者たちのことを伝えておかねばなりません」

「そうね。本拠地は辺境伯領なんだっけ?」

「はい。私の記憶が確かなら、ミエパリーノ商会はそこそこ老舗だったはず。代替わりで、店が変わってしまったのかもしれませんね」


 先代はなかなかのやり手だったそうだけど、今の商会長は質が悪かったようだ。


「私たちよりも、ケイドンの領主から伝えてもらうほうが、ちゃんとやってくれるかなぁ」

「いえいえ!サツキ様のお名前でも、十分かと!(ケディシア伯爵(ケイドンの領主)からの接触もないくらいだ。さすがに、王家から話はいっているだろう)」

「そんなことないでしょ。やっぱり、司祭様のほうが名前も知られているでしょうし」


 ということで、ピエランジェロ司祭にケイドンに向かってもらうことになった。護衛には、ザックスの他にスコル、メリーご夫妻が変化の腕輪を付けて同行することに。

 ピエランジェロ司祭がケイドンの領主と、辺境伯宛の手紙を用意している間に、馬車を用意する。馬のゴーレムでひく馬車だ。普通の馬車よりもスピードが違うし、結界付だから何かあっても大丈夫だろう。


『いもうとちゃんなら、わたしらでつれてこれるよ?』

『びょーんって』

『ぎゅーんって』

『パッてとんでさ』

「……それ、妹さん、怖くて泣いちゃうパターンじゃないの?」

『……』

『……かもね?』

「とりあえず、司祭様が迎えに行くまで守ってあげて? 人質にしてるんだから、小さな子をどうこうするとは思いたくないけど、何事も万が一ってのがあるからね」

『はーい』

『あたし、いってくるー』

『おれもー』


 そう言って飛んで行ったのは風と光の精霊たち。暴走しないことを祈りつつ、私の視線は宿舎の敷地の外に生えた、巨大な蔓へと目を向ける。

 ちなみに、馬車をひいていた馬たちは最初こそ驚いていたけれど、精霊たちのおかげなのか、すぐに落ち着いて草を食み始めている。


「あとは、アレをどうしようか」


 今では叫び声も聞こえなくなった揉み手男たち。かなり蔓も伸びて姿の確認もできない。


 ――生きてるよね?


 少しだけ不安になった私だった。


             *   *   *   *   *



『ケ・イ・ド・ン、ケ・イ・ド・ン』

『ケ・イ・ド・ン、ケ・イ・ド・ン』


 風と光の精霊たちは、ケイドンの街へ向かって凄いスピードで飛んでいきながら、楽し気に声をあげている。


『みえてきた』

『どれどれ』

『いもうとは、どこだ?』

『ん~? あ、あのたてものか』


 精霊たちは、ミエパリーノ商会のケイドン支店を見つけると、すぐにチャーリーの妹の押し込められている部屋を見つけた。

 妹が押し込められていた部屋は、穀物などが山積みされている倉庫の奥。

 泣きつかれて、眠っている様子に、精霊たちは心配そうな顔になる。


『……つれてかえっちゃダメかな』

『でも、サツキがまもれっていってたし』

『じゃあ、じゃあ、これだけでも、はずしてもいいかな』


 風の精霊が指さしたのは、妹の両方の足首に付けられている鉄の拘束具。鎖の先には丸い鉄がついている。


『あかくなってる。いたそうよ?』

『とっちゃえ、とっちゃえ』


 パキンッ


 鉄の割れる音がすると、『いえーい』とハイタッチをして喜ぶ精霊たち。

 

『さぁ、あとはこのこをまもるわよ!』

『おー!』

『さぁ、こーいっ!』


 ファイティングポーズをきめる精霊たち。

 ……店の者たち、来ない方が身のためだぞ。


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