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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
四度目の冬支度
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第801話 ミエパリーノ商会

 チャーリーを先頭に、私たちは馬車のある方へと向かう。ドンドンさん、ギャジー翁、私の順についていく。

 宿舎のある敷地の入口まで向かう間、チャーリーに経緯を聞く。

 相手はレミネン辺境伯領の領都に本店を構える、ミエパリーノ商会の次男坊らしい。

 その次男坊が、グルターレ商会の取引先を知りたがり、自分のところに乗り換えさせたいらしい。その前に、うちの村がどういった村なのかを調べにきたという。


 ――調べるくらいで、隷属の首輪や毒を使ったり、子供を誘拐したりする?!


 明らかにまっとうな商会じゃなく、裏の商売みたいなのもやってそうだ。


「サツキ様、なんか嫌なニオイがします」


 ボソッとドンドンさんが言う。獣人の嗅覚は侮れない。いったい、どんな商品を持ってきたというのだろう。

 入口では男が三人、立って待っていた。

 一人は明らかにイライラした顔をした二十代くらいの男性で、あとの二人は二十代から三十代くらい、無表情な顔で周囲を見ている。護衛か何かなんだろうか。

 すでに荷物をいくつか降ろしているようで、馬車の脇で作業をしている人の姿も見える。

 イライラしていた男は私たちの姿を確認すると、すぐに作り笑いを張り付かせて揉み手をしながら待ち構えた。


「初めまして。『グルターレ商会』の紹介で参りました」


 ニコニコとしているけれど、目が笑っていない男の視線は、ドンドンさんのほうに向いている。ドンドンさんが村の代表と思っているのだろう。

 実際、チャーリーもドンドンさんが私に敬語で話をするのを聞くまで、ドンドンさんが村の代表だと思ってたのだ。この世界、女性のほうが地位が低いのは当たり前らしいので、この程度は気にはしないけど。

 しかし、本当のグルターレ商会の人間エルフだったら、私の周りに精霊が集結しているのがわかるし、私のことも周知されているはずなので、私に声をかけてくるはずなのだ。


「(やはり、エルフはおりませんね)」

「(わかりました)」


 こそりとギャジー翁が私に耳打ちする。


「紹介ってことは、グルターレ商会じゃないんですね?」

「あ、はい。私どもは……」

「俺たちはグルターレ商会だって聞いたから、出てきたんだ。話が違う」

「え、いや、そのグルターレ商会から依頼がありまして」

「依頼?」

「え、ええ! しばらく、こちらにうかがえないので、私どもが代わりにと」


 揉み手をしながら話し続ける男に、不快感しか感じない。


「(どういうこと?)」


 こっそり風の精霊たちに聞いてみる。


『グルターレのれんちゅう、いま、こっちにむかってるよぉ?』

『レミネンへんきょうはく? そのてまえあたりー』

『とうぞくにおそわれてたけどぉ、やっつけてたー』

『でも、ちょっとじかんかかるかもー』


 絶対、ミエパリーノ商会がらみだろうと、私でも思う。

 私がぐぬぬぬ、と怒りを抑え込んでいる間、男はドンドンさんに商品を売り込もうと必死だ。


「うちはグルターレ商会としか取引はしない」

「そこをなんとか! うちでしか取り扱ってない商品もございます! それに、こちらの村の物もグルターレ商会よりも高く買い取らせていただきますから」

「値段の問題では……」

「さっさと、持ってこい!」


 ドンドンさんが言い切る前に、男は背後にいた男たちに荷物を私たちの前へと運ばせた。


「さぁ、ぜひ、こちらを御覧ください」

「……おや、ニックじゃないかい」


 いつの間にか私たちの後ろに現れたピエランジェロ司祭が、ミエパリーノ商会側にいる若者に声をかけていた。


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