<チャーリー>(2)
チャーリーたち『炎の盾』は、無事に辺境伯領の領都へと戻ってきた。
冒険者ギルドにグルターレ商会の依頼完了をして報奨を受け取るチャーリーたち。
「うわ」
「こんなに?」
リーダーのロイと、ビートが声をあげる。
以前受けたミエパリーノ商会の護衛依頼の金額とは比べるまでもなく、高額な報奨にホクホク顔になる。
――口止め料も込みなんだろうな。
四人は口には出さなかったけれど、その金額に意図を察して、顔を見合わせ頷きあった。
戻ってきて数日は平和な日が続いたのだけれど、ロクシーたちも戻ってきてからは、そうもいかなくなった。
街中でミエパリーノ商会の連中がやたらと絡んで来ては、グルターレ商会のことを教えろと、しつこかったのだ。
あまりのしつこさに、長期の依頼を受けてしばらく街から離れよう、ということにした『炎の盾』。
ミエパリーノ商会とは別の商人の王都までの護衛依頼があったので、渡りに船とばかりに、それを受けることにした。
王都では『焔の剣』とは出会えなかったけれど、彼らの定宿に泊まって、上機嫌な『炎の盾』の面々。
帰りはまた別の護衛依頼を見つけ、辺境伯領の領都へと戻って来れたのは二カ月後のこと。
「おや、おかえり。チャーリー、あんたに手紙が来てたんだよ」
『炎の盾』の定宿の女将が、一通の手紙を手渡した。
「俺に手紙?」
手紙を受け取り頭を傾げつつ、女将に「ありがとう」と言うと、部屋の鍵を受け取り、階段を上がっていく。部屋は二階の角の四人いっしょの大部屋だ。
チャーリーの両親は文字は読めるが、あまり書くのは得意ではないのもあって筆不精。チャーリー自身も親同様で、滅多に手紙を書くようなことはない。
そんな自分に手紙を書いてくるような人が思い浮かばなかったが、手にした封筒を見て、もう一度、頭を傾げる。
「どうした?」
部屋のドアを開けて中に入ったロイが、ついてこないチャーリーに声をかける。
「うん。これ、村長からだ」
「村長?」
「なんで、村長?」
すぐにベッドの上に荷物をおいて、手紙を開く。
「……」
「なんだって」
「……モモが病気だって」
「なんだって!?」
「早く戻って来れないかって……日付は三週間も前じゃないかっ!」
「とりあえず、エヴィスと一緒に村に戻れ」
「す、すみません。あ、宿代」
「気にするな。俺たちなら、しばらく二人で稼ぐくらいはできる」
「この時間だったら、乗合馬車があるだろ。ちょうど荷ほどきもしてないんだ。そのまま出てしまえ」
「は、はい」
チャーリーと弟のエヴィスは、慌てて部屋を出ていき、ちょうど村の方面に向かう馬車に乗ることができた。チャーリーたちの村は辺境伯領の領都から馬車で約二日ほどのところにある。途中、野営地で一泊して、翌日の夕方には村に入る予定だった。
しかし。
「……ここは」
ガタガタと大きな音で目が覚めたチャーリー。身体を起こそうとしたが、両手、両足が太い紐で縛られていた。
どういうことだ、と焦りながら、周囲を見回すと、大きな荷物がいくつか置かれている。
――馬車の中か?
なんとか身体を動かそうとして、背後で「ううう」と唸る声が聞こえた。
慌ててなんとか振り向くと、そこには顔色の悪い弟のエヴィスが同じように紐で縛られ、倒れている。
――どういうことだ!?
チャーリーは身体を這わせながらエヴィスのそばへと近寄る。
「エヴィス、エヴィス……って、な、なんだこれ」
チャーリーはエヴィスの首に黒い首輪が嵌められていることに気が付いた。