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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
四度目の冬支度
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<チャーリー>(2)

 チャーリーたち『炎の盾』は、無事に辺境伯領の領都へと戻ってきた。

 冒険者ギルドにグルターレ商会の依頼完了をして報奨を受け取るチャーリーたち。


「うわ」

「こんなに?」


 リーダーのロイと、ビートが声をあげる。

 以前受けたミエパリーノ商会の護衛依頼の金額とは比べるまでもなく、高額な報奨にホクホク顔になる。


 ――口止め料も込みなんだろうな。


 四人は口には出さなかったけれど、その金額に意図を察して、顔を見合わせ頷きあった。

 戻ってきて数日は平和な日が続いたのだけれど、ロクシーたちも戻ってきてからは、そうもいかなくなった。

 街中でミエパリーノ商会の連中がやたらと絡んで来ては、グルターレ商会のことを教えろと、しつこかったのだ。

 あまりのしつこさに、長期の依頼を受けてしばらく街から離れよう、ということにした『炎の盾』。

 ミエパリーノ商会とは別の商人の王都までの護衛依頼があったので、渡りに船とばかりに、それを受けることにした。

 王都では『焔の剣』とは出会えなかったけれど、彼らの定宿に泊まって、上機嫌な『炎の盾』の面々。

 帰りはまた別の護衛依頼を見つけ、辺境伯領の領都へと戻って来れたのは二カ月後のこと。


「おや、おかえり。チャーリー、あんたに手紙が来てたんだよ」


 『炎の盾』の定宿の女将が、一通の手紙を手渡した。


「俺に手紙?」


 手紙を受け取り頭を傾げつつ、女将に「ありがとう」と言うと、部屋の鍵を受け取り、階段を上がっていく。部屋は二階の角の四人いっしょの大部屋だ。

 チャーリーの両親は文字は読めるが、あまり書くのは得意ではないのもあって筆不精。チャーリー自身も親同様で、滅多に手紙を書くようなことはない。

 そんな自分に手紙を書いてくるような人が思い浮かばなかったが、手にした封筒を見て、もう一度、頭を傾げる。


「どうした?」


 部屋のドアを開けて中に入ったロイが、ついてこないチャーリーに声をかける。


「うん。これ、村長からだ」

「村長?」

「なんで、村長?」


 すぐにベッドの上に荷物をおいて、手紙を開く。


「……」

「なんだって」

「……モモが病気だって」

「なんだって!?」

「早く戻って来れないかって……日付は三週間も前じゃないかっ!」

「とりあえず、エヴィスと一緒に村に戻れ」

「す、すみません。あ、宿代」

「気にするな。俺たちなら、しばらく二人で稼ぐくらいはできる」

「この時間だったら、乗合馬車があるだろ。ちょうど荷ほどきもしてないんだ。そのまま出てしまえ」

「は、はい」


 チャーリーと弟のエヴィスは、慌てて部屋を出ていき、ちょうど村の方面に向かう馬車に乗ることができた。チャーリーたちの村は辺境伯領の領都から馬車で約二日ほどのところにある。途中、野営地で一泊して、翌日の夕方には村に入る予定だった。

 しかし。


「……ここは」


 ガタガタと大きな音で目が覚めたチャーリー。身体を起こそうとしたが、両手、両足が太い紐で縛られていた。

 どういうことだ、と焦りながら、周囲を見回すと、大きな荷物がいくつか置かれている。 


 ――馬車の中か?


 なんとか身体を動かそうとして、背後で「ううう」と唸る声が聞こえた。

 慌ててなんとか振り向くと、そこには顔色の悪い弟のエヴィスが同じように紐で縛られ、倒れている。


 ――どういうことだ!?


 チャーリーは身体を這わせながらエヴィスのそばへと近寄る。


「エヴィス、エヴィス……って、な、なんだこれ」


 チャーリーはエヴィスの首に黒い首輪が嵌められていることに気が付いた。

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