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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
四度目の冬支度
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<チャーリー>(1)

 冒険者になって4年目のチャーリー、17歳。

 同じ村出身の幼馴染たちとパーティを組んで、レミネン辺境伯領の領都を拠点に活動していた。

 パーティのメンバーは、リーダーで18歳のロイ、16歳のビート、14歳の弟のエヴィスに、チャーリーを加えた4人だ。

 妹のモモはまだ10歳なので、村の両親のところにいる。


「『焔の剣』のドゴールさんに、声をかけてもらえるなんて光栄です!」


 リーダーのロイが感激したように言う。

 ドゴールたちと出会ったのは、レミネン辺境伯領の領都だ。

 グルターレ商会が領都で仕入れた物が多かったこともあり、馬車の台数が増えてしまい、護衛を追加することになった。

 その時領都にいた冒険者パーティの中でも優秀だとギルドから勧められたのが、チャーリーたちのDランクパーティ、『炎の盾』だった。


「ハハハ、そんな大袈裟な。そっちもその若さで、もうすぐCランクになるっていうんだから立派なもんじゃないか」

「えへへへ」


 実はチャーリーたちがもっと幼い頃、『焔の剣』は村の依頼で魔物討伐に来たことがあったのだ。チャーリーたちは、彼らに憧れて、『炎の盾』というパーティ名を決めたのだ。


「これから向かう場所は、お前たちには悪いが村の中までは入れない。一応、村の入口近くに宿舎がある。しばらくそこで待っててくれないか」

「はい、わかりました」


 ドゴールの言葉に素直に返事をして、グルターレ商会の護衛として向かったのは、五月たちの村だった。

 大きな村に呆気にとられつつ、宿舎に泊まること3日。立派な宿舎に便利なトイレと風呂、差し入れされる食事に感動しまくりのチャーリーたち。

 村を出るときには、グルターレ商会がレミネン辺境伯領で買い込んだ物はほとんど買い取られ、馬車の数は減った。

 そこから先はグルターレ商会はビヨルンテ獣王国に向かうということで、チャーリーたち『炎の盾』はケイドンを経由して、護衛の仕事を探して辺境伯領へと戻ることになったのだが。


「おい、チャーリーじゃないか」

「ロクシー様」


 チャーリーたちは、レミネン辺境伯領の領都に本店を持つミエパリーノ商会の次男ロクシーとケイドンの街で遭遇した。

 ロクシーは二十代半ば。出来のいい長男と違い、少しばかり短絡的なところがあった。

 その彼がケイドンの街の支店へ荷物を運ぶのを任されてやってきたところに、チャーリーたちの姿を見かけて声をかけてきたのだ。


「なんで、ケイドンなんかに来てんだよ」

「護衛の仕事で」

「ほぉ~? お前たちを護衛に雇うとはね」

「護衛といっても、俺たちはサポートだけだったんで」

「へぇ。どこのパーティと一緒だったんだ」

「ロクシー様はご存知ですかねぇ。王都を拠点にしている『焔の剣』です」

「『焔の剣』……もしかして、グルターレ商会の護衛か!」

「え、はい」


 その時チャーリーは、護衛している商会名が出てくるくらい、『焔の剣』が有名なんだと感心したのだが、ロクシーは一気に不機嫌になった。

 なぜならミエパリーノ商会は、グルターレ商会をライバル視していたからだ。 実際は、規模で言えば、各国を行商で巡っているグルターレ商会のほうが大きいのだが。

 特に、辺境伯領の領都を中心にしか考えが及ばないロクシーには、邪魔な連中、くらいにしか思っていなかった。


「ところでお前たちはどこへ行ってきたんだよ」

「え、それは言えませんよ」

「なんでだよ」

「そこは顧客の情報ですから」

「そんなの、終わってしまえば関係ないだろう」

「いやいやいや、また次回、声をかけてもらえるかもしれないじゃないですか」

「はっ、お前ら程度が何を言ってる。教えないなら、うちの仕事はお前らには頼まないぞ」

「……(別にミエパリーノ商会だけが仕事じゃないんだけどな)」

「ロクシー様!」


 ロクシーがチャーリーたちに詰め寄っていたところに、商会の者に声をかけられた。その隙に、チャーリーたちはそそくさとその場を離れた。


「お、おいっ!」


 ロクシーの呼ぶ声は聞こえたけれど、これ以上、捕まっていては領都に戻るのが遅くなるので、チャーリーたちはケイドンの街に留まらずに、急いで辺境伯領の領都へと向かうことにした。


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