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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
四度目の冬支度
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第798話 サツマイモの収穫とグルターレ商会の来訪

 ぐっと気温が下がった今日、私はログハウスの畑で白い息を吐きながら、サツマイモを掘り出している。

 つい三日ほど前に『ヒロゲルクン』で植えたばかりだが、安定の精霊パワーで、葉っぱはモサモサ、サツマイモはゴロゴロだ。

 この冬にログハウスの裏手にある貯蔵庫で保管して熟成させようと思っている。


「箱、いっぱいになったー」


 泥だらけの顔をにぱっと笑顔を浮かべたマリンが、サツマイモの入っている木箱を頭の上に持ち上げている。

 木箱の大きさは瓶ビールのケースくらい。ドワーフたちに作ってもらったものだ。


 ――普通の子だったら、浮かせることも無理なのに。というか、私でも運べないんじゃない?


 私は顔を引きつらせつつ、マリンに貯蔵庫へ運びこむように頼む。

 ちなみにセバスは前足で掘って、潰してしまったのをマリンに叱られて、敷地の隅で拗ねている。

 結局、木箱は三つほどになった。私一人だったらこの冬に食べきれないくらい十分だけど、マリンやノワール、セバスがいると足りないかもしれない。

 特にセバスは、生でボリボリ食べるのだ。


「もう一回、植えるか」

「植えるか」

「ぷっ」


 腕を組みながら仁王立ちしている私の隣で、同じセリフと格好をするマリン。その上、土の精霊たちまで同じような格好をするものだから、思わず吹き出してしまう。


「何よ、サツキ」

「何でもない、何でもない」


 私はタブレットを手に再びサツマイモを『ヒロゲルクン』で植える。また三日後くらいに収穫できるだろう。

 ちなみに、ドワーフたちは芋焼酎に挑戦して、いまだに納得いくものが出来ていないらしい。代わりにワインのほうは、グルターレ商会がとんでもない値段で買い取っていくくらいの出来だ。

 一応、私にも10本ほど差し入れしてもらったけれど、嗜む程度の私にワインの違いがわかるわけがない。そのまま貯蔵庫で眠っている。

 そのうち飲むと思う。


『さつき~』


 畑がすっかりサツマイモの苗だらけになったところで、風の精霊がログハウスから飛び出してきた。


『すまほがひかってるよ~』

「え? わかった~」


 私は慌てて家の中へ駆け込む。

 風の精霊が言った『すまほ』は、ギャジー翁が作ってくれた魔道具の『すまほ』のことだ。村からの連絡以外では使うことがないので、村で何かがあったのだろうか。


「はいっ!」

『あ、サツキ様、ハノエです』

「はい、はい、何かありました?」

『ええ、グルターレ商会が来たんですが、村の中に入れないようでして』

「え、入れないって、馬車が?」

『ええ。護衛には見たことのある冒険者がいるんですが、商会の代表者がいつも来られるカスティロスさんじゃないんです』


 ――見たことのある冒険者?


 『焔の剣』の面々であれば、中に入って来れるはず。それとは別の冒険者なのだろうか。


「ちょっと、そっちに行きます」

『すみません』


 ハノエさんとの通話を終えると、私は家から出てタブレットを手にする。『収納』の中にはスーパーカブがしまってあるのだ。


「どうしたのぉ?」


 マリンがセバスの背中に乗って伸びている。彼女も少しは疲れたのか。


「なんか、村に商会が来たみたい。ちょっと行ってくる」


 私はスーパーカブを取り出して、すぐにエンジンをかける。


「だったら、私らも行く~」

「メェェェぇ」


 ネドリさんたちも、エイデンたちもいない今、厄介なことにならなければいいんだけど、と思いながら、スーパーカブで村へと向かうのであった。

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