第797話 薪の準備
買い出しから戻った翌日には村へと行き、毛布と冬服を孤児院へと持っていき、子供たちに配った。
もこもこのラグマットや、クッションをプレゼントしたら、ママ軍団は大喜び。
前にミサンガ用にと渡してあった刺繍糸を使って刺繍した、デニムのような青いシャツを貰ってしまった。マルママのマナさんが、双子の育児の合間に刺繍をしていたらしい。
凄く細かい刺繍に、びっくり。これをあちらに着ていけないのが、凄く残念なくらい綺麗に出来ていた。だからと言って、山での普段着として着るのはもったいないレベル。
「今度、グルターレ商会が来た時には、商品として売れるんじゃない?」
そう言ったら、マナさんは凄く嬉しそうだった。
あちらに行った日は雨に降られたけれど、こちらは最近はいい天気が続いている。
秋も深まってきて、朝から冷える日が続いて薪の消費が増えている。そのせいもあって、ログハウス脇の薪用の小屋は、少しだけ空きスペースが出来ていた。
――薪を作っとかないとねぇ。
切るのは風の精霊に頼めるとして、問題は薪用の木だ。
薪用の小屋のところでそんなことを考えていると。
「サツキさま~」
「さしいれ~」
テオとマルが、ママたちに持たされたお土産を持って、我が家へとやってきた。
今日のお土産は、村で作った燻製肉。自分でもやろうやろうと思っていたのだけれど、ついつい他のことをやってて、忘れてしまっていた。ありがたや~、である。
私が薪用の木を伐採しに行くというと、テオとマルもついてくるという。結局、一緒に山の中をウロウロ。
紅葉している木や、すでに落葉している木もあって、すっかり晩秋の様相。
山の恵みもそろそろ終わりのようで、キノコや木の実を探しているテオたちでも、なかなか見つけられなかった。そんな中、ようやく見つけたキノコが、見るからに真っ赤に白い水玉の、毒々しいキノコ。それを持ってきた時は、慌ててタブレットで『鑑定』してしまった。
ちなみに、ちゃんと食用だった。びっくり。
テオたちと歩き回るのは、いい運動になって、薄手のダウンジャケットを羽織ってたせいもあって、額には汗がにじむくらいになっていた
気が付けば、うちのログハウス用の薪に使う分以上の木を『伐採』していたようで、せっかくならと、村のほうへと持ってきた。
カコン、カコンとリズミカルな音が響く。
村の広いところに、私が『ヒロゲルクン』で伐採した木々が山積みになっていて、それを村人たちが薪にするべく、斧をふるっているところだ。
「助かりました。マティーたちでは山での伐採は厳しいですから」
そう言うのはピエランジェロ司祭。
村の買い出し担当のマティーたちは、ゲイリーさんの農場で働いてはいたけれど、木の伐採はやったことがなかったらしい。
今は目の前で獣人たちに木の枝打ちや、切るところのコツのようなのを教わっている。
別の所では獣人たちが気持ちいくらいスッパスッパと木を切っていて、それを遠目に子供たちが見ている。
「冬を越すのには足りますかね?」
「ええ。村の方々からも分けていただいていましたので、なんとかなると思います」
ひょろりとした助祭のレキシーさんは枝打ちされて地面に落ちているのを、子供たちと一緒に拾って孤児院のほうへと運んでいる。
日が暮れてきて、村の中ではモリーナさん作の街灯が点き始めた。
私は、自分のところ用の薪を作らねば、と家のほうへと戻ることにした。





