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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
四度目の冬支度
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第790話 エイデンとノワールの好物

 精霊たちが戻ってきたのは翌日のこと。

 ログハウス前で、ちびっ子ノワール、ちびっ子マリン、セバスと一緒に、チャッチャカとダンシングバターを作っているところだった。

 私は踊っていない。

 踊っているのはノワールとマリンだ。セバス、足踏みしている。

 繰り返すが、私は踊ってはいない。

 さすがに無音で躍らせるのも可哀想なので、スマホでアップテンポな音楽を流して、それに合わせて踊っている。

 

 ――楽しそうねぇ。


 そんな彼らをニヨニヨしながら見ながら、東屋の席に座って久しぶりにハチミツ入りの紅茶を飲んでいると、風の精霊の一人が『サツキ~!』と叫びながら飛んできた。

 そして、その後をどんどん風の精霊が飛んでくる。


「うわ、うわ、うわ~!?」


 ベチベチベチッと私の顔に張り付くものだから、思わず叫んでしまう。紅茶は思いきり零れてしまった。


「おいっ! 何やってんだ!」

「そうよ、サツキから離れなさいっ!」


 踊りまくってた二人がトテトテと駆け寄ってきた。


『うるさいぞ、ちびどらごん』

『そうだぞ、にゃんこもだまれ!』

『そうだ、そうだ』

「なんだと!」

「なんですって!」


 売り言葉に買い言葉。

 二人はそう叫ぶと、それぞれにドラゴンと巨大な黒豹のような姿に変わった。


 ――二人とも、カッとなるの早いっ!


 ノワールは巨大になりすぎて、敷地に入りきらないから飛び立つし、マリンはビャクヤたちくらいの大きさになってる。まさか、ここまで大きくなるとは、びっくりだ。


「ちょ、ふ、二人とも、落ち着いてぇぇぇ」


 私は顔にへばりついた精霊たちをひっぺがして叫ぶと。


「何をやってる!」


 今度はエイデンが人の姿で、どこかから飛んできた。本当に、どこから飛んできたのだろう。


 ――ああ! なんか大事になっちゃう~!


 まさかのエイデンの登場に焦っている私。

 そんな私をよそに、エイデンはベシッとノワールの頭をひっ叩くと、再びちびっ子の姿に戻るし、ギロリとマリンを睨みつけると、「ピャッ!?」と叫んで……マリンは子猫になってしまった。


「大丈夫か、五月」


 ちびっ子ノワールを抱きかかえながら空から舞い降りたエイデン。まるで親子だ。いや、実際、親子みたいなものか。


「う、うん。ごめんね。何かやってたんじゃないの?」

「まぁ、ダンジョンに潜ってただけだから気にするな」

「え、一人で?」

「……」

「ちょっと、誰と一緒に行ってたのよ。本当に大丈夫なの!?」

「大丈夫だ。ボドルたちと一緒だったんだ。やつらなら、あの程度なら生きて戻れるだろ」

「……何かあって、後で奥さんたちに恨まれるとか、嫌なんだけど」


 ジトリとした目を向けると、フイッと目をそらすエイデン。


「とにかく、ちょっと風の精霊たちとノワールたちが揉めただけだから、こっちは気にしないで。早く、ボドルさんたちのところまで戻ってあげてよ」

「えぇぇぇ(今から、50階まで戻るのかぁ。面倒だなぁ)」

「ほら、早く……皆と戻ってきたら、何か作ってあげるから」

「ホントか!」


 嬉しそうな顔で身を乗り出してくるエイデンに、思わず身をそらせる。


「え、あ、うん」

「よし、じゃあ、行ってくる。ノワール、お前も来い」

「ちょ、その状態のノワールで行くの?」


 ちびっ子ノワールはエイデンに抱きついている。この子が魔物相手に戦うのか、と思うと危ないんじゃないかと心配になるのだが。


「五月、こいつ、こうみえて、ボドルたちより強いぞ」

「え」

「エイデン様、さっさと行って、帰ってこようよ」

「よし、じゃあ、五月、俺はカレーが食いたいぞ」

「カレー! カレー!」


 まさかのカレーの希望に、二人とも同じ物が好きなのを今更ながらに知った。


「は? う、うん、わかった。作っとくよ」

「よーし!」

「よーし!」


 ニカリと笑い合うノワールとエイデンの顔は、そっくり。

 上機嫌でピューンと飛んで行く二人を、呆れながら見送る私なのであった。

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