第757話 二人の騎士
二人の騎士は真っすぐに……エイデンのほうへと向かった。
がっしりとした体格に似たような顔立ちの二人の違いは、年齢と口ひげを生やしているかどうか。五十代の騎士には立派な白髪が目立つ灰色の髪と口ひげが生えている。背丈は少しだけ若い方が高い感じだ。
「貴方様がエイデン様でいらっしゃいますか」
年長の五十代の騎士から声をかけられた。
「……そうだが」
エイデンが不遜そうに返事をする。
古龍だから仕方がないのかもしれないけれど、相手に合わせてもいいんじゃないか、と思ってしまうが、騎士のほうは一瞬目を開いただけで、そのまま話を続けるようだ。
「(確かに、先代様が見せて下さった肖像画に似ている。まさかこの方が……)ご一緒に、モチヂュキ様もいらっしゃると伺っておりますが」
「五月は彼女だ」
エイデンの隣に立っていた私がペコリと頭を下げると、騎士の二人も頭を下げた。
「私はエクスデーロ公爵家領、領軍で軍団長をしております、バンダン・ノームズと申します。これは、息子のヴォルフ・ノームズ」
「ヴォルフ・ノームズです」
バンタン・ノームズと名乗った年長の騎士は視線を私に向けて、丁寧な挨拶をしてくれた。ノームズ、という名前になんとなく聞き覚えがあったので、首をかしげると。
「もう一人、息子がおりまして、エクスデーロ公爵家騎士団で副団長をしております。名前はゴーゴリ・ノームズ。先代様と同行させていただいたのですが、覚えておいでか」
私は村に来た時に一番最初に話をした人だったのを思い出した。そう言われてみれば、がっしりとした体格と顔立ちが似ているかもしれない。
エイデンも覚えていたのか、「ああ、あいつか」と声をあげる。
「エイデン様に、ゴーゴリが大変お世話になったとか。ぜひ、我々もお手合わせいただければ」
目をキラキラさせているバンダンさん。
そういえば、夏の間、村に来ていた騎士たちはエイデン相手に楽しそうに剣を振り回していたっけ。(遠い目)
バンダンさんも彼らと同系統(脳筋)ということなのだろうか。
「父上、それは後でしょう」
ヴォルフさんが窘める。
彼は父親とは違って、冷静なようだ。バンダンさんは「すまん、すまん」と謝っている。
「先代様が、エイデン様とお会いするのを楽しみにお待ちになっております。我々がお屋敷まで先導します」
「あ、ありがとうございます」
ヴォルフさんはそう言ったけれど、そんな彼も馬のゴーレムが気になるようで、チラリと視線を向けていた。
まぁ、誰でも気にはなるだろう。
しかし、彼はそんな欲を抑え込み、自分たちの馬のほうへと戻っていく。内心、偉いぞ、と思ってしまった。
私たちは馬車に乗り込み、騎乗したバンダンさんたちの後をついていく。
「なかなか活気がある街だねぇ」
「王都にも負けない感じですわね」
マグノリアさんと一緒に、馬車の窓から街の様子を見る。街中の大通り沿いの家々は背の高い立派な家が続いている。お店がいくつもあるのか、歩いている人々も多くて賑やかだ。
ちびっ子たちも気になるようで、私とは反対側の窓にへばりついて外を見ている。
人が多いせいか、馬車もあまりスピードが出せていなくて、いつになったら屋敷に着くんだろう、とマグノリアさんと話していると、グッとスピードが落ちた。
「……着いたようだぞ」
向かい側に座っていたエイデンがそう言うと同時に、馬車が止まった。
窓の外を見ると、たくさんの使用人らしき人たちが左右に並び、中央には見覚えのある老人が、ご婦人を伴って立っていた。