第751話 ド、ドレス~?!
部屋に戻ると、中にいた皆の目が私のほうに向けられる。
「な、何?」
「いや、公爵家から何だったのかなって」
「ああ……」
私は、公爵家に行くということになったことを伝えると、エイデン以外の面々の顔が固まった。
「参ったよねぇ」
公爵家に行ったら、キャサリンの両親とかも出てきそうだし、少しばかり面倒だな、と思う。
「サツキ様、ドレスはお持ちですか」
マグノリアさんが青い顔で聞いてきた。
「私が持ってると思う?」
「……ですよね」
はぁ、と大きくため息をつかれてしまった。
マグノリアさんに言われて、前公爵家に着ていくつもりだった服のチェックをされることになった。
私はマグノリアさんに、別の部屋へと連れていかれることに。
公爵もキャサリンも私のラフな格好を知っているし、それこそキャサリンについてきていた騎士とか侍女の方だって知っている。
さすがに今の格好(グレーのパーカーにチェックのシャツにジーンズ)は厳しくても、前公爵に会うために買ってきたワンピースを用意してはあったのだ。
仕方がないので、私はタブレットの『収納』にしまってあったワンピースを取り出して見せたら、マグノリアさんに渋い顔をされた。
私が手にしているのは、白い襟の紺色のiラインワンピース。一応、結婚式の二次会にでも着ていけそうな服、と思って買ったんだけど(あちらで誰かが結婚する予定があるわけではない)。
「サツキ様、これではメイドみたいではありませんか。公爵家に伺うのでしたら、もう少し格の上のもののほうがよろしいかと思います」
マグノリアさんの言葉に、そういうもの? と思っていると、ドアがノックされる。
「はい?」
『五月、いいかい?』
「エイデン?」
『ああ』
ドアを開けると、エイデンが中に入ってくる。
「五月のドレスだが、これはどうだ?」
エイデンが一枚のドレスを、彼の空間収納から取り出した。
「まぁ!」
マグノリアさんが嬉しそうな声をあげる。彼女がそんな反応をするのも仕方がない。
エイデンの手にしているのは、ピンク色の生地に、白いレースや小さなキラキラ光る石がついているドレスなのだ。
――いやいや、これはもっと若い女の子が着るようなものでしょ。
それ以前に、これは貴族の家を訪問するときに着るような服なのだろうか?
結婚式のお色直しにでも着そうな、あるいは、どこのお姫様が着るんだというドレス。ドレスに唖然としていると、マグノリアさんがいそいそとエイデンからドレスを受け取って、私の身体にあててみては、まぁ、まぁ、まぁ、と嬉しそう。
マグノリアさん、私をいくつだと思っているんだろうか。
「私には似合わないと思うんだけど……」
私は眉を八の字にして言うんだけど、エイデンもマグノリアさんもそんなことはない、と勧めてくる。
――私、もう30代なんですけど(遠い目)
『サツキ様?』
今度はドゴールさんが声をかけてきた。
「は、はい~?」
エイデンがドアを開けると、ドゴールさんが入ってきて、私にあてられていたドレスを見て目を見開く。そんな顔をされるほどなのか。私も微妙な気持ちになる。
「お取込み中、すみません。あの、ドレスだったらカスティロス様に相談されたら、と思ったんですが……そちらでも」
「いえ! カスティロスさんに連絡とってくださいっ!」
思わず身を乗り出して、食い気味に言ってしまった。
エイデンがガーンという顔になっていたけれど、私にピンクのドレスはないと思う。
明けましておめでとうございます。<(_ _)>
2025年もよろしくお願いします。