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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
異世界を旅する秋
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第749話 冒険者向け宿屋『暁の星亭』

「三階には、うちのパーティ以外に、二つのパーティが借りているんだ」


 階段をのぼりながらドゴールさんが話してくれた。

 一階と二階は一人から二人が使うような個室がいくつもあり、三階にあるのはパーティ単位で使う大きな部屋が3つあるそうだ。

 どうもサントスさんの実家の宿屋『暁の星亭』は、冒険者向けの宿屋だそうで、王都の中でもかなり規模の大きいタイプなのだそうだ。

 それもそのはず、王都の老舗ホテルが本家で、そこから独立した三男だったのがサントスさんのお父さんなのだそうだ。

  チラリと部屋のドアを開けて待ってくれているサントスさんの姿を見てみる。ドゴールさんたちのようなガッチリタイプではなく、ひょろりとしたサントスさん。


 ――そりゃぁ、ボンボンと言われるかもねぇ。

 

 私はペコリと頭を下げて部屋の中へと入っていく。

 案内された『焔の剣』のメンバーが借りている部屋は、想像以上に広かった。

 メンバーそれぞれの個室の他、依頼人とやりとりができるような応接室のような部屋もついていた。私たちはその部屋へと案内された。

 私とエイデンが並んで座り、マグノリアさんとザックス、マークは私の背後に、大きなテーブルをはさんで向かい側にドゴールさんが座って、背後にエルフのセッティさんとサントスさんが立っている。


「よーし、ちびっ子たちはあっちの部屋へいこうぜ」


 そう声をかけてくれたのは虎獣人のキャシディさん。熊獣人のマックスさんも一緒に、ノワール、マリン、フェリシアちゃんを別の部屋へと連れて行ってくれた。

 すれ違いに、若い女の子がティーワゴンを押して応接室に入ってきた。白い襟のついたグレーのワンピースに茶色い髪をお団子にしている感じが、いいとこのホテルのウェイトレスさんを連想させる。これも本家の影響なのかもしれない。


「お、ライラちゃん。ありがとうな」

「いえ」


 ライラちゃんと呼ばれた女の子はニコリと笑みを浮かべると、すぐに私たちのテーブルへとお茶の入ったティーカップを並べていく。

 その様子にほけーっと見惚れているのは、ザックスとマーク。


 ――うちの村にはいないもんねぇ。


 思わずニヤリと笑ってしまう。

 冒険者ギルドの仕事で他の街や村に行くことはあっても、こんな高級な宿になど泊まらないだろうし、食事をするところだってもっとラフなところだろうし。


「まさか、王都でサツキ様たちと会うことになるとは思いませんでしたよ」


 ライラちゃんが部屋を出て行ったのを確認してから、ドゴールさんが話し始めた。


「私も『焔の剣』の皆さんと遭遇するとは思ってませんでしたよ。グルターレ商会のお仕事は?」


 ドゴールさんが手でお茶を勧めてきたので、素直にティーカップに手を伸ばす。あちら(日本)のものと比べると重量感があるものの、たぶん、こちら(異世界)では高級な部類になりそうな気がする。


「カスティロス様たちは、さすがに、ここには泊まれないんで、本家のほうに泊ってるんだ」


 グルターレ商会は明日には王都を発って、南にある、コントリア王国よりも小さな国々が乱立している小国家連合というところに向かうらしい。

 タブレットの『地図』を見ても気にしたことがなかったので、そんなに国があったのか、と今更ながらに驚く。

 乱立、というだけに、少々危険な場所で、しばらく戻れそうにないのだそうだ。年明けに戻れたらいいくらいということなので、うちの村の方に来れるのはいつになるかわからなそうだ。


 ――マティーくんたち、しっかり買い出し部隊に成長してくれるといいんだけど。


 ピエランジェロ司祭に託してきた、孤児院出身のマティーくんたちのことを思い出しながら、お茶を飲む私なのであった。

 

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