第738話 移動の馬車でのおしゃべりタイム
ギャジー翁の馬車が、荒地を進んで行く。
馬車の中には、私とマグノリアさんにフェリシアちゃん、ノワールとマリン、子羊セバス、御者台にはザックスとマークが乗っている。
ノワールたちちびっ子組とフェリシアちゃんは、簡易ベッドを広げてお昼寝中だ。これもギャジー翁渾身の魔道具技術の賜物で、ほぼ振動を感じないおかげだ。
エイデンはといえば、古龍の姿で上空にいるらしい。エイデンがいるだけで、魔物が近寄ってこないそうだ。生きた魔物除け、エイデン。そう思ったら、ちょっと笑える。
「ケイドンの街で、買い物ができてよかったです」
マグノリアさんがホッとした声でそう言う。
「いやぁ、私も考えなしですみません」
頭をポリポリかきながら、思わず謝る。
ケイドンで何を買い物をしたのかというと、私が着る服だ。
普段からあちらの既製品しか着てなかったし、村でも誰も何も言わなかったから気にしなかったけど、カラフルなネルシャツとか、ジーンズのようなものは、こちらでは、まったく一般的ではなかったらしい。
それに貴族の屋敷に向かうのに、ドレスの一着もないのは、非常にマズイというのだ。
そう言われればそうか、となったのは馬車に乗ってマグノリアさんに指摘されたから。
村に前公爵たちがやってきた時は、私たちが迎える側だったから、まったく気にしていなかったけれど、こちらの普通はそうだろうな、とちょっと反省した。
本当はケイドンはスルーして先に進むつもりだったけれど、立ち寄ってマグノリアさんの知り合いの洋服屋さんに飛び込んだ。
その店で取り扱っていたのは、ドレスと言っても中古品。少し流行遅れかもしれないと言われたけれど、普段から着るわけでもないから、こちらの流行には興味はない。
エイデンはいいのかと思ったら、彼は人の姿になるときに魔力で服装も作っているそうなので、気にしなくていいらしい。いつも黒っぽい革鎧を着ているイメージか、シャツに黒い革パンツのイメージしかないので、ちゃんとした正装ができるのか、若干心配ではある。
「髪のほうは、なんとかできそうな長さでよかったですわ」
「ああ、しばらく美容室行ってないから……」
気が付いたら、ゴムでまとめられるくらいの長さまで伸びていたので、つけ毛で誤魔化せそうだ。
それからは、こちらのファッション事情を聞いて盛り上がった。
女性のパンツスタイルは一般的ではないとか、スカートの丈で膝が出ているのははしたないと言われるとか。濃い色合いの服を着るのは娼婦と思われるとか!
スカートは滅多に着ないし、着たとしてもそんな丈のスカートも着ない。しかし、パンツスタイルと濃い色合いは当てはまるから、少しビビった。
と言っても、マグノリアさんの知っているのは平民での話。
貴族ともなると、まったくわからない。貴族のお屋敷に行くなんて、人生でそう何度もあることはないと思うけど、ちゃんとわかる人に常識を聞いておきたいところ。
しかし残念ながら、そういった知り合いはいない。
「でしたら、冒険者ギルドに依頼をされてみたら」
「え? なぜ、そこで冒険者ギルド?」
「意外と貴族出身の方もいらっしゃると聞きますよ。まぁ、女性ともなると多くはないかもしれませんが、人にモノを教えるような依頼もあったはずです」
「へぇぇぇぇ」
確かに、なんでも屋のイメージはあったけれど、そういうのもアリなのか、と思わず感心してしまった。





