第737話 旅の同行者たち
最後までグズグズと言っていたウノハナたちだったけれど、結局、シロタエの圧には負けたようだ。
その間に、出かける準備は完了したので、私は馬車をタブレットの『収納』にしまい込む。
「さて、村のほうに行くかな」
「五月は、すーぱーかぶか?」
「そうね。あなたたちは走っていくんでしょ?」
「当然」
「先に行ってるわよ」
「メェェェ」
二人と一匹は、そう答えると猛ダッシュでログハウスの敷地から飛び出していった。セバスにいたっては、子羊サイズのままだ。
私は呆れながらも、駐車小屋から自分のスーパーカブを押し出して、エンジンをかける。
うちの山周辺以外でスーパーカブに乗ったことはないけれど、移動手段の一つとして確保しておいた方がいいかなと思ったのだ。
こちらでの常識的には、馬に乗るのだろうけれど、乗馬歴のない私には無理。ギャジー翁の馬車を引く馬のゴーレムだったら、乗れるんだろうか?
――いやぁ……自分が乗れているイメージが全然浮かばないわ。
気が付けば、立ち枯れの拠点を過ぎ、村へと到着。
ノワールたちは村の子供たちとキャッキャと追いかけっこをして遊んでいる。追いかけられているのはノワールだ。
中にはテオとマルの獣人コンビもいるけれど、なかなか捕まえられないようだ。
「五月ー、遅いぞー」
追いかけられながらも、余裕で声をかけてくるノワール。マリンがもう少しで追いつきそうだ。
「……ノワールたちが早いのよ」
スーパーカブをタブレットに『収納』して子供たちのところへと向かうと、ママ軍団も赤ちゃんたちと一緒にやってきた。
「もう行かれるのですか」
ハノエさんがガズゥの弟のゲッシュを抱えながら聞いてきた。大人しく抱えられているゲッシュは、ガズゥに似てなかなかのイケメンに育ちそうだ。
「うん。あ、今朝、マカレナたちと会えなかったから、戻るまで牛乳を止めてもらうようお願いしてもらってもいい?」
「構いませんよ。テオ、後で行ってきてくれるかい?」
「うん!」
いつの間にか、ハノエさんのところに駆けつけていたテオが、すっかりガズゥの代わりのお手伝い要員になっている。
「サツキ様」
ハノエさんたちの後ろから現れたのは、マグノリアさん。
今回の旅の、こちらの常識担当だ。彼女のそばには彼女の娘のフェリシアちゃんもいる。
他に同行してもらうのは、彼女の息子のザックスと、孤児院の年長組のマーク。彼らには冒険者ギルドで護衛としての指名依頼として受けてもらう予定だ。
基本、魔物やら盗賊やらは、エイデンやノワールたちがいるので大丈夫だとは思うものの、何分、人としての常識の部分では不安しかないのだから、仕方がない。
「マグノリアさん、すみません。孤児院の面倒も見てもらってたのに」
「いえ。元々、ベシーやリンダたちだけでも出来ていましたから」
確かに孤児院の年長組のお姉さんたちが頑張ってたのもあるだろうけれど、マグノリアさんが来たおかげで、だいぶ子供たちも落ち着いたと思うのだ。
「だいじょうぶよ。サツキさま。わたしたち、ちゃんとおるすばんできるわ!」
「ねー!」
「できる!」
「できう!」
孤児院の年少組の女の子たちと一緒に、彼女たちと一緒にいたローまでもが元気に声をあげた。
……可愛すぎる。