第727話 村の長閑な日常……のはず
アスファルトを敷いたおかげもあって、村と北の拠点の往来が増えている。
特に、ギャジー翁が馬のゴーレムを二頭、村に提供してくれたのが大きい。馬のゴーレムに馬車を引かせて、ちょっとした乗合馬車のようになっているらしい。
村の中でも家庭持ちの人たちはダンジョンに行って食料確保をしに行くけれど、若手の冒険者たち、ケニーとラルルや、ネシア(ハノエさんの妹)と彼氏のアレシュ、ドゴルくんたちなどは北の拠点を経由して、魔の森を抜けて、獣王国の街に仕事をしに行っているようだ。
魔の森っていうだけで、危なそうに思うのだが、うちの村の若者たちに言わせると、そうでもないらしい。
やっぱり獣人ともなると、オークなんて瞬殺なんだろうなぁと、前にヒャッハー!してた姿を思い出して、遠い目になる。
せっかくなので、ログハウスの敷地から村までの道や、トンネルに繋がる道もアスファルトに敷きなおそうかと思っている。村人たちが温泉に行ったついでに、ちょこちょこ集めてきてくれるので、そのうち完成するだろう。いつになるかは未定だけど。
現在、『すまほ』の保有者は、ギャジー翁とヴィッツさんと私、そして獣人ではハノエさんに1台渡してある。
残念ながら、まだハノエさんでは使えないようで、日々、努力はしているらしい。
ハノエさんに言わせると、ネドリさんやガズゥだったら使えるかもしれない、とのこと。ネドリさんは特に獣人には珍しく魔法が使えるので、白狼族の村から戻ってきたら確認してみるそうだ。その前に、自分でも頑張る、とハノエさんは張り切っていた。
今日は果樹園の梨を収穫したので、お裾分けついでに村に向かうことにした。
山や村に植えられている果樹は、季節ごとに見事な実を生らせていて、村人たちに収穫してもらっていたりする。
特にシャインマスカットなどの葡萄も豊作なようで、ドワーフたちがワイン、ワインと大騒ぎしているらしい。中でも火酒作りの一族のゲインズさんの盛り上がりようは凄いようで、ドワーフたちが鍛冶仕事よりもワイン造りに駆り出されているらしい。
スーパーカブで村にやってくると、エンジンの音に気付いた孤児院の子供たちが出迎えてくれた。
「サツキ様!」
「こんにちは!」
「こんにちはー!」
ニコニコと笑顔で挨拶をされると、私も笑顔が自然と浮かんでくる。
「こんにちは。今日はお勉強は?」
「司祭様のお知り合いの方がいらしているそうです」
答えてくれたのは、この場で一番の年長者のルルー。
ピエランジェロ司祭の知り合いとは、誰のことだろう、と思ったら、ケイドンの街の人でゲイリーさん。前に、孤児院の子供たちを連れてきてくれた老人だ。
「何かあったのかな」
ちょっとお茶でもと、立ち寄るような距離でもない。
少し心配に思いつつ、ルルーに子供たち用に梨を分けてあげてから、ハノエさんの家に行くと、ママ軍団が赤ちゃん抱えて勢ぞろいしていた。