第724話 ルーアル石拾い
午後には全員で軽トラで村に戻ってきた。ヴィッツさんの馬のゴーレムは、私が『収納』で預かった。
魔物の肉を山ほどお土産にして戻ったので、村はお祭り騒ぎ。大量の肉があれば、いつでもお祭りになるけど。
私はヴィッツさんと一緒に、ギャジー翁に『すまほ』の話をしに行ったら、『ガーン』という効果音付きのような顔をされてしまった。
その後、私のスマホを見せてあげたら、余計にショックが大きかったらしい。
通話の他に、画像がとれたり、動画もとれる、それが一台で、となったら、そりゃぁ、ショックかもしれない。
大地くんのは見たことはないのか、と聞いたら、彼自身が持っていなかった。じゃあ、連絡はどうやって、と思ったら、稲荷さんと大地くんの間では『念話』で連絡が取れるから買ってもらえなかったらしい。
大地くんの友人関係構築のためにも、買ってあげた方がいいんじゃないか、と内心思ってしまった。
村に戻ってきて三日、ギャジー翁は家に籠りっきりだ。
私としても、こちらで通話ができれば、ありがたいので、頑張ってもらいたい。
孤児院の子供たちと一緒に、私はエイデン温泉にやってきている。異世界アスファルトのためのルーアル石を探しに来たのだ。お駄賃は稲荷さんの温泉のところのお昼ご飯だ。
手元にあったルーアル石は使い切っていたので、最初から探す羽目になったのだけれど、これが思いのほかすぐに見つかった。
温泉の建物の周辺にゴロゴロと転がっていたのだ。
「サツキ様、この石でいいんですか?」
今日の孤児院の子たちの最年長のルルーが、手のひらに赤い石を持ってきた。
「そうそう、赤くて柔らかいの。角のところを押してみて」
「わ、壊れた」
「柔らかい石みたい。見つけたら、その辺にまとめて置いておいてくれる?」
「はーい」
嬉しそうに足元に置くと、他の子供たちに、あの石でいいんだって、と言って教えて回っている。
温泉用の建物の前に、少しずつルーアル石が集まってくる。
私も彼女たちに負けていられないと、少し離れたところまで足を伸ばす。温泉のあるところから、少し下ったあたりで、ぽつぽつと木が生えている。環境がよくないのか、あまり生育はいいとは言えない。
『五月、これでいい?』
後ろから声をかけてきたのは、ウノハナ。彼女の足元には、子供の頭ほどありそうな赤い石が転がっている。
慌ててタブレットで『鑑定』すると、間違いなくルーアル石だ。
「すごい。大きいの、よく見つけたね」
『フフフ、上のほうに行くと大きいのがゴロゴロ転がってるよ』
「え、そうなの?」
この辺りにもコロコロと落ちてはいるが、残念ながらあまり大きいのは見当たらない。私は見切りをつけて、ウノハナと一緒に温泉のほうへと戻ることにした。大きいのは当然『収納』済だ。
温泉の建物の前までくると、すでに私の膝くらいの山が出来ていたので、これも『収納』する。それに気付いた子供たちは、あっ、と驚いた顔をしたけれど、すぐに新しいルーアル石を拾って積み始めた。
――競争してるみたい。
フフフ、と笑いながら、私は上のほうへと、向かっていく。
稲荷さんの温泉宿を通り過ぎ、上っていく。けっこう、しんどい。
こちらに来てから、なんだかんだと動き回っているおかげで、体力はついたと思っていた。それでも大変に感じるのは、ここの標高が高いせいだろうか。
少し先に、赤い色をした岩がゴロゴロしていて、その周りにシンジュと他にホワイトウルフが二匹集まっていた。
ふと振り返ってみると、だいぶ上ってきていたようで、稲荷さんの温泉宿が下の方に見えた。
「あ、あれ?」
私たちの後を誰かが追いかけてきているのに気が付いた。ウノハナも立ち止まり、私のそばにやってくる。
『ん? ギャジーのじいちゃんじゃない?』
まさかのギャジー翁の登場だ。
私に気が付いたのか、ニコニコしながら手を振って斜面を上ってきていた。