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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
メンテナンスしまくる初秋
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第720話 ナイトメアコッコ

 朝食には、さっそく『ナイトメアコッコ』の肉と卵が出た。

 獣人たちが大喜びしていた『ナイトメアコッコ』。冒険者たちが野営をしていると、襲うことはないけれど、寝ている連中に名前の通り悪夢を見せる魔物らしい。

 それに聞こえてきた断末魔のような鳴き声も、夜中に聞いたら、それはそれは恐ろし気に聞こえるらしい。

 オクタさんが若いころに経験したそうで、その時の恨みだけではなく実際に食べてみたら美味しかったのもあって、奴らの巣を見つけるたびに狩っているらしい。

 朝からすごい量なのに、メリーさんは苦も無く調理していく。私も何か手伝わなきゃ、と思いつつも、彼女の手際のよさに何もできなくて、せめても、とログハウスのキッチンでフライパンでちぎりパンを焼きまくった。 

 あると便利なホットケーキミックス。

 

「いやぁ、この拠点で焼きたてのパンを食べられるとは思いもしませんでしたよ」

「柔らかい……」


 東屋でみんなで一緒に朝食をとっている。やっぱり、東屋はあって正解だった。

 嬉しそうに言うのはオクタさん。ヘルゲさんは手にしたパンに感嘆の声をあげる。

 自分でも食べてみて、ちょっともちっとした食感に、内心ギリギリ合格点をあげた。


「それよりも、この目玉焼き、凄いですね」


 私の目の前の皿にのっているのは、目玉焼きのはずなんだけど。

 目玉の黄身は赤い。まるで血のように赤いのだ。それに白身の部分はうっすらグレーがかっている。


「……真っ赤だね」

「凄いでしょう?」


 メリーさんがコロコロと笑いながらも、目玉の部分を割っている。これで半熟とかだったら、とか思ったら、怖すぎて食べられない。

 もぐもぐとテオも美味しそうに食べているので、私も恐る恐る食べてみる。


「……え、やだ。美味しいんだけど」


 うちの鶏たちの卵も相当美味しいと思うんだけど、これは見た目はグロテスクながらも、独特な旨味を感じる。

 そして目玉焼きの脇にのっているのは、ナイトメアコッコの肉。獣人たちはかぶりつくような大きな肉の塊を食べているけれど、私はちょっとだけにした。

 卵の色にも驚いたけれど、この肉にも驚いた。

 まるで炭焼き地鶏みたいに黒い肉。あれは表面が黒いだけで、中は普通に鳥肉だと思うんだけど、これは中まで黒い。イカ墨だとか竹炭だとかの料理があるけど、あれみたいに黒いのだ。


「んまっ!?」


 一口食べて、びっくり。

 鳥の肉にしては、少し脂っこい気はしたけれど全然許容範囲。ちぎりパンを半分にして、中に挟んで食べてみたら、これがイケる。

 スライスチーズやピクルス、レタスを挟んでハンバーガーにして食べてもいいかもしれない。

 私はタブレットをとりにいって『収納』の中を確認する。

 あちら(日本)のスライスチーズはなかったけれど、牛飼いのヨシヒトさんのところから頂いているチーズが入っている。熟成タイプのはログハウスの裏手の貯蔵庫に置いてあって、『収納』にあるのは白いフレッシュチーズ。クリームチーズっぽい感じだ。

 ピクルスは作ってないし、レタスもない。玉キャベツはあるけど、これから刻むのも面倒なので、せめてチーズだけでもと、フレッシュチーズを取り出して、皿に出す。

 皆は私が何をするつもりなのか、興味深々。

 私はもう一度ちぎりパンに鳥の肉を挟んでチーズも入れて食べてみた。


「うわー。これまた違った美味しさが……」


 まだまだ世の中には、美味しいものがいっぱいあるんだなぁ、と思った朝食だった。

 彼らの視線の痛さに、フレッシュチーズを差し出したら、もの凄い勢いで食べ始めたかと思ったら、ナイトメアコッコもチーズも見事に完食してしまった。

 そのうち、ナイトメアコッコが駆逐されてしまうんではないか、と思うような勢いであった。


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