第715話 久々のバージョンアップと新メニュー
タブレットに届いたメッセージは二つ。しばらくぶりの通知に、イグノス様の影が見え隠れするのは、私だけだろうか。
一つは『タテルクン』のバージョンアップのお知らせ。
メニューを確認すると、新たに『設計』なる文字が。
「え、もしかして、これって自分で設計図がかけるってこと?」
今までは決まった間取りの建物しか建てられなかったけれど、この『設計』というのを使えば、自分の好みの間取りで作れるらしい。
「あ、建物のタイプは選べるんだ」
基本は『タテルクン』で設置できる建物で、その間取りを選んで建物に落とし込むタイプのようだ。これはやりだしたら止まらないタイプだ。
――今始めたら、ダメなやつだわ。
私は『やりたい!』という気持ちを抑え込んで、もう一つのメッセージを確認すると、『ヒロゲルクン』の新メニューの追加通知だった。
「どれどれ……よし! 『アスファルト舗装』発見!」
今までは『石畳』しかなかったのに、『アスファルト舗装』もその下に並んでいる。素材としては普通の石の他に、『ルーアル石』なるものが必要らしい。
「え、何それ」
聞いたこともない名前だし、今まで特定の名前まで指定されたことがなかったので
困惑する。
すでに手に入れている物であればいいけれど、なければそれを採りに行かないとダメだ。使えないメニューになりそうで、若干イラつく。
――とりあえず、『収納』の中にあるかな。
最近は『収納』が無限なせいもあって、入れっぱなしになっている物が増えている。エイデンや獣人たちからの貢物しかり、山のメンテナンスもしかり。
もしかしたら、メッセージがくるくらいだし、あるんじゃないか、と期待して調べてみると。
「……あったじゃん」
数は多くはないけれど、『ルーアル石』と表記される物があった。どこで手に入れた物なのか、念のため『鑑定』しようと、一旦ログハウスから出る。
血のニオイが残ってはいたけれど、ログハウスの外には人影がなく、道のほうを見るとウノハナとシンジュが日向ぼっこしている。
皆でオークの解体をするのに、他の場所に行ったのかもしれない。
私は目の前に『ルーアル石』を出してみた。
「ちっさ!」
大きな岩が出てきてしまうんじゃないか、と心配して外に出てきたんだけれど、実際出してみれば、私の拳くらいの大きさしかなかった。赤味のある石で、少し力を入れるとポロリと角が崩れる。変なニオイもしない。
気を取り直して『鑑定』してみると。
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▷ルーアル石(欠片)
エイデン温泉周辺に多く産出する石。
柔らかい石のため、岩サイズの大きなものは多くない。
他の石材と混合して利用すると硬化する。耐熱効果あり。
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――『エイデン温泉』なんて明記してしまうあたり、確実にイグノス様でしょ。
呆れながらも、実際、使えるんであればありがたいことなので、心の中で感謝する。
温泉用の建物周辺を『整地』した時にでも『収納』していたのだろうか。
それよりも、問題は『ルーアル石』がどれだけの量が必要なのか、ということだ。足りなければ、温泉に行って探さないといけない。
――急ぎではないけど、気にはなるよね。
私はタブレットを持ったまま、ウノハナたちのいる道のほうへと向かった。
活動報告更新しました。
『『山、買いました』4巻重版決定!』
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/695723/blogkey/3351731/
ありがたいことに4巻が重版することになりました。
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!