第711話 北の拠点のメンテナンスに行こう
北の拠点に向かうために、軽トラを走らせている。
助手席にはなぜか、ちびっ子姿のノワールとマリン。荷台には珍しくセバスまで乗っている。
そして護衛代わりの三つ子のうちの、ウノハナ、シンジュ。
久々にこちらの道を走っているせいか、少しガタガタしている。
この前の豪雨の影響で、泥や石、木や落ち葉で道が荒れているせいだと思う。ここもなんとかしないとダメかもしれない。
助手席に乗るのは初めてのノワールとマリンは、シートベルトでしっかり固定したはずなんだけど、勝手にはずして窓ガラスにへばりついている。下手に窓ガラスを開けたら、身を乗り出しそうで怖い。
「危ないから、ちゃんと座って!」
私の注意の声は完全無視だ。
急ブレーキを踏むことがないように気を付けながら走ってはいるけれど、心配は心配だ。子供の姿というのはズルいと思う。
チャイルドシートを用意したほうがいいのか、悩ましいけれど、ほとんど乗らない彼らのために、と思うと微妙だ。
いい加減、ドラゴンや猫の姿に戻ればいいのに、今では子供の姿のほうが、テオやマルたちと遊べるので楽しいらしい。
いつか戻れなくなるんじゃ、と私の方が心配しているくらい。
荷台に乗っているはずのセバスは、鳴き声一つ聞こえてないので不気味だ。
「ここらで、一度休憩ね」
「うん」
「はーい」
魔の森が見えてきたところで、一旦トイレ休憩。ここまでのんびりペースで走ったので一時間半くらいかかった。
ちらりと荷台を見ると、余裕でセバスは寝ていた。あの揺れで寝ているセバスに思わず呆れる。
タブレットの『タテルクン』で簡易トイレを設置して、そそくさと入る。
こちらに来た当初はKPが足りなくて追加で買うなんて想像もしなかったけれど、今では消費しきれないくらい貯まっているので、いくらでも買える。
ちなみに、もともとある簡易トイレは、今は教会に設置してある。風呂小屋もだ。
「うーん!」
トイレを終えて、外に出て背伸びする。
道沿いは桜並木が続いているおかげで、日陰ができている。並木越しに見える荒地を見ると、強い日差しが暑そうだ。
ちびっ子二人も、簡易トイレに入って用を足す。
子供の姿になったので、トイレも私と共用だ。失敗することなくできているようで、私としても助かる。実際は失敗しても、うまいこと誤魔化しているのかもしれないけど。
軽く手足を動かしてから、再び軽トラに乗りこみ、拠点まで休みなしだ、と気合を入れる。
魔の森に入ると、ガーデンフェンス越しの木々は育ちすぎているようで、一気に薄暗くなる。拠点を作った時に間伐をしたけれど、この辺りは育つのが早いらしい。
こうしてのんびり軽トラで走ること、トータルで三時間くらい。ようやく、北の拠点の入り口が見えてきた。
この辺りは周囲の木が暗いこともあって、試しに葉の色の明るい紅葉と楓をあちらで買ってきて、ガーデンフェンスに沿って数本植えていたりする。
しかし周囲の濃い緑に負けている気がする。もう少し伐採をして、明るくしたほうがいいかもしれない。
「あ、あれは」
北の拠点の入り口に人影が見えた。大柄な獣人の男の人が手を振っている。
そこにいたのは、テオパパのガイシャさんだ。その足元にはテオもいて、ぴょんぴょんと飛び跳ねていた。
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テオパパの名前は、書籍のほうでは既出です。
ちなみに、マルパパはヘデンさんと言います。