第708話 女子は恋バナが大好物、再び
寺子屋で、女の子たち皆で、アクセサリー作りに勤しんでいる。
きっかけは、キャサリンがモリーナの店の中にあるアビーのアクセサリーを買いに行ったこと。
アクセサリー職人のアビーが作る物は繊細で、私なんかが作る素人くさい物とはレベルが違う。公爵令嬢のキャサリンがつけても違和感のなさそうな、高級そうなアクセサリーもあったりする。
……うちの村の女性は買わないと思うけど。
そんな中、キャサリンが目をつけたのは、自分用ではなく、男性用のアクセサリー。確実に婚約者の王太子用だ。
そこで、ポツリと自分でも作れたらと呟いたとか。
「そうそう、そこに糸を通して」
「はい、アビーせんせー!」
元気に返事をしたのは、孤児院の女の子の中でも最年少のガーディ。太めの紐に穴の空いている魔石を通していく。
その様子を見ながら、普段、あまり表情が変わらないアビーも口元を緩ませる。
小さい女の子たちは、寺子屋の教室の前のほうで、ビニールシートを敷いた床の上で作業中。キャサリンや孤児院のお姉さんたちは、教室の後ろのほうの机でそれぞれ集中して作業をしている。
私は、小さい子たちと一緒に作っている。私が作っているのは、レザーと青い魔石を使ったブレスレットに挑戦中だ。
「キャサリン様、王太子様とはどうなんですか?」
「フフフ」
お姉さんたちは、恋バナしながら作業をしているようで、私も耳を傾けてしまう。人の恋バナは、ワクワクする。
去年は、ガズゥにやきもちを焼いていた王太子。今もキャサリンにべた惚れなのだろうか。
「仲良くさせていただいてるわ」
「王太子様、かっこいいから、モテて大変なのでは」
「……そうね。でも、婚約者は私ですから」
去年よりも強気な感じに、キャサリンの自信が伺える。それだけ、王太子からも大事にされてるのかもしれない。
「今年はご一緒じゃないのですね」
「ええ。隣国の王女様のお相手をしなくてはならないのですって」
隣国の王女と聞いて、ギョッとする。
「それって、獣王国の?」
思わず振り返ってと聞いてしまう。
獣人をよく思っていない人が多いこの国に、獣王国の王女が? と思ったからだ。
「いいえ? 我が国の南にある小国家連合の一国からですわ」
「へぇ! 南にも国があったの」
自分に関わりがありそうな国しか気にしていなかったので、他にも国があるとは知らなかった。
キャサリンの話によると、今の時期、王室の避暑地に、その王女様というのも一緒に行っているらしいとのこと。所謂、接待というやつだろう。
国の大きさからも、格下の国らしいのだけれど、そこは一国の王女。無下にはあつかえないのだろう。
年齢は王太子と同い年で、この秋から同じ学園に通うことになるらしく、王太子が面倒をみることになるそうだ。
「え、でも、それって」
「キャサリン様、大丈夫?」
「ん? 何がですの?」
孤児院のお姉さん組が心配そうに聞いているけれど、キャサリンのほうはわかっていないらしい。
恋愛ごとに鈍感な私でも、彼女たちの心配は予想がつく。
「王太子様、浮気しない?」
ストレートな発言に、私もびっくり。キャサリンも一瞬固まったけれど、すぐにクスクスと笑いだす。
「大丈夫よ」
「なんで?」
「王女様にも、婚約者がいるんですって。今回は同行されていないようだけど」
「そうなのですね!」
「どうして、そんなことを思ったの?」
「この前、行商の人から買った本に、そういうお話があったから……」
グルターレ商会、どんな本を売ったのやら。
その後は、村の誰がカッコいいとか(今はザックスが一番人気らしい)、誰と誰が付き合っているとか(注目は物づくりが得意な獣人のオースくんと、牧場にいるマカレナの二人らしい)、楽し気な会話が聞こえてきて、私もニヨニヨしながらアクセサリーを作るのであった。
本日、9月14日は、『山、買いました』4巻発売日です。
よろしくお願いします<(_ _)>
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