第705話 バレッタに興奮する師弟コンビ
目をキラキラさせた大地くんが、キャサリンの髪のバレッタに夢中になっている。
「凄いなぁ」
「ちょ、ちょっと大地くん」
大地くんは、けしてバレッタに触れてはいない。触れてはいないんだけど、かなり接近していて、キャサリンは困った顔になっている。
大柄な獣人が多い中、背が低く(日本人だったら一般的な身長だと思うけど)見えて華奢な感じの大地くんなので、怯えてはいないようだ。
一方のマリアンさんや護衛のハンナさんはどうしたのかと思えば、残念なことに、ギャジー翁に見惚れていた。
ギャジー翁は『翁』と言っているけれど、見かけは20代後半くらいの長い銀髪の美青年に見えるのだ。それも姿はそのまま尖ったエルフの姿。
芸術的な美しさのエルフを見たら、見惚れるのも仕方がないと思う。
ちなみに、グルターレ商会の面々は人族の姿に偽装したままのようなので、彼女たちはこの村では初めてエルフを見たことになる。
「だ・い・ち・くんっ!」
「はっ、すみません!」
私の強めの声に、やっと気付いてくれた大地くん。
「いやぁ、あんまり見事な(魔除けな)んで、つい」
「……それほどでもないと思うけど」
素人の私が作ったものだから、大地くんに褒められるほどの出来ではないと思う。それでも、素材は魔石以外はこちらにはないものだから、公爵家のお嬢さんが使っても問題ない……といいのだけれど。
「いえいえ、これは素晴らしいですよ(サツキ様の力でしょうか。凄まじい力を感じますね)」
そう言って同じように褒めてくれたのはギャジー翁。
「ガラス細工での花飾りを見たことはありますが、ここまで繊細な物は初めてです」
「師匠……これ、ガラスじゃないです」
「なんだと!?」
大地くんの言葉に驚いたギャジー翁がキャサリンに近づいて、バレッタを見ようと屈みこむ。
あんまりじっくり見られると、私の下手さがわかってしまうから、内心やめてー、と叫ぶ。
それにキャサリンのほうも、ギャジー翁が相手だと、顔を赤くして恥ずかしそうな顔になっているのだ。
恐るべし、エルフの美男子(いや、美老人か)。
「あ、あー、そうだ。キャサリン、残り2つのバレッタを見せてもいいかな」
「は、はいっ」
バッグを持っていなかったキャサリンの代わりに、バッグにしまっておいたピンク系の花のバレッタと、黄色系のリボンのバレッタを取り出して、ギャジー翁に渡した。
「なんと! こんなに軽いとは! これなら子供が髪につけても重たくないか……」
「余程、乱暴に扱わなければ、割れませんからね」
「むむむ。アース、これはどういった素材だ」
「師匠……素材もですけど(この魔除けも)」
「おお、そうだな。やはり、サツキ様が作られたものですか」
「ええ。ちょっと、キャサリン用にと思いまして」
「えーと、ちなみに、こちらのお嬢さんがたは?」
今更、キャサリンたちのことを聞いて、驚く私。
グルターレ商会が来ていたのは知っていても、公爵家の面々が来ていたのは気付いていなかったらしい。
二人とも、ギャジー翁の家から出ずに何かを作っていたらしい。
「見かけない子だと思ったんですよ」
「これは、失礼した」
大地くんは苦笑い、ギャジー翁はにこやかな笑顔を浮かべていた。
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『山、買いました4』口絵公開(1)
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