第692話 精霊とのおしゃべりタイム(2)
三つの光の玉たちが、ふよふよしながらテーブルの上に降り立った。人型じゃないから、『立った』という言い方は違うかもしれないけど、そんなふうに感じたのだ。
『さすが、いとしごのそばはちがうねー』
『いやなかんじ、あっというまにきえた』
『じわじわくる~』
「……育ってるね」
彼らの言葉の通り、確かに光の玉がゆっくりと大きくなってきている気がする(遠い目)。
精霊たちがいうには、この土地に来るまでキャサリンに纏わりつくような瘴気が王都からついてきていたらしい。
それも、ひとつだけではなく、ふたつ。色や濃さが違うらしい。濃いほうは、粘着質だったらしく、
『わたしたちのちからでは、はじきかえすのでせいいっぱい』
光の精霊の玉が悔しそう。その度に、身を削ってキャサリンを守ってくれてたようだ。彼ら曰く、王都にいた時は、屋敷にある、桜の木のおかげもあって、もう少し大きかったらしい。
『いちばん、キツイのはがっこうのなか!』
『こまかいのが、うじゃうじゃ』
『ここで、えいきをやしなうのよー!』
彼らの言葉を聞いて、ちょっとだけうんざりする。
確かに、キャサリンは美人さんに育ったし、王太子の婚約者という立場もあるから、男女問わずに、関心をもたれるのは理解できる。
――だけど、まだ12歳だよねぇ?
12歳といえば、小学生。小学生時代から、面倒な人間関係の世界にいるなんて、想像できない。
そういえば王太子が彼女の2つ上くらいだったので、14歳くらいだろうか。地位だけではなく、なかなかの美少年だったし、そのくらいの年齢の女子なんかも、キャサリンに嫉妬して、ドロドロしていてもおかしくはないか。
そんな中で、この小さい光の精霊たちは頑張っていたのか、と思ったら、胸が痛くなる。
「偉かったねぇ」
思わず手を伸ばして、光の精霊を労わるように撫でると。
『!?』
『!!!!』
『ふわっ!』
「えぇぇぇぇ!」
光の精霊が、いきなり強く光ったかと思ったら、すぐに収束して、目の前に人型に変わった精霊がいた。
「さすが、五月だ!」
エイデンが喜びの声をあげるものだから、外にいた村人たちが何事かと集まってきた。
「サツキ様、大丈夫ですか!」
「あー、なんでもない、なんでもないですー!」
「しかし、なんか、凄い光が」
「うむ、かなり光ったな」
「ですよね、エイデン様!」
――ああ、もう! 余計なことを言わないでよ!
ジロリと睨んだけれど、エイデンは気にしないでニコニコしている。
とりあえず、なんでもないよー、戻って下さいねー、と皆を宥めることに成功した私は、もう一度、テーブルの上にいる二つの光の玉と、人型になった光の精霊に目を向ける。
『ありがとう! ありがとう! これでキャサリンをまもれるわ!』
感謝の言葉を言いながら、目をうるうるさせながら見上げてくる光の精霊に対し、目はないものの、視線を感じる光の玉。
ちょっと撫でただけなのに、なぜに人型に変わるのか。
今までも、触れたことはあったと思うんだけど、と思い返すけど、何が違うというのだろう。
『おねがい! おねがい!』
『わたしたちも~!』
『キャサリンをまもりたいの!』
『たいのー!』
キャサリンの名前を出されたら、断るわけにもいかない。撫でるだけでいいんだろうか、と心配になりながらも、一応、心の中で『キャサリンをお願いね』と両手で土と火の精霊の光の玉を撫でた。
「!!!」
『きゃっほーい!』
『やったー!』
ピカーッと強い光が発した後、その場には、小さな人型に変わった土と火の精霊がいた。
――私の手って、どうなってるんだ?
呆然としながら、両手を見つめる私なのであった。





