第688話 エイデン以外のドラゴンは?
エイデンのドラゴンの姿なんて、うちの村に住んでいると当たり前のように見るけれど、一般的にドラゴンの姿は見ることはないらしい。
その姿を目に焼きつけたい、というのが前公爵の望みらしい。
「そりゃぁ、そうだろう。他の連中は自分たちの棲み処で寝こけている奴らばかりだしな」
「なんですと!?」
「もしかしたら、俺みたいに、人の姿でうろついているヤツもいるかもしれんがな」
ニヤリと笑うエイデンに、前公爵は目を大きく見開く。
そもそも、ドラゴンと呼ばれるモノは、一般的な魔物とは別の生き物で、膨大な魔力と知性があるのだとか。人の姿でうろつくレベルだったら、
ちなみに、ドラゴン種としては、火龍や氷龍等がいるそうだ。それぞれの長老とエイデンとは仲良しらしい。
彼らはそれぞれの棲み処から出てきていないそうで、前公爵も、その存在は伝説でしか聞いたことがなかったらしい。
――うわー、凄く嬉しそう。
前公爵、ワクワクが止まらないらしい。
「え、えーと、じゃあ、地や水みたいなのはいないの?」
イメージとしては、襟巻きがついてるトリケラトプス的なアースドラゴンとか、大きな海蛇的なシーサーペントとかも、そうだったりするのかな、と思って聞いたのだけど、エイデンが、物凄く嫌そうな顔をした。
「あんなのをドラゴンと一緒にされるのは心外だ。アースドラゴンなどと人族たちが言ってるアレはデカいトカゲの一種だ。本来の地龍はデカい亀だし、海だったらシーサーペントではなく、海龍だな。あれも海底深くで眠りこけてるだろう」
火龍や氷龍と違い、地龍と海龍は一匹? 一頭? しかいないらしい。その分、長寿だそうで、エイデンの次に長生きなのが彼らなのだとか。
エイデンの実年齢が、すごく気になるし、色々、私の持ってたイメージとは違うらしい。
それは前公爵も同じのようで、頬を赤くしながらエイデンの話を聞いている。
「デカい亀なのに、ドラゴン……」
「そこは、イグノスに文句を言ってくれ」
呆然としている私に、クククッと笑うエイデン。
「も、もしや、地龍とは、我が国と南の小国家群とを阻んでいる、ドラゴン山脈のことでは、ございませんよね」
真っ青な顔で問いかけてきたのは、前公爵。
「うん? あの山はそんな名前だったのか」
「ええ。実は我が国には、南の山脈の成り立ちの昔話がありまして。大きな亀が眠ってしまい、いつの間にか山脈が出来上がった、と」
「ほお」
キラリとエイデンの瞳が輝く。
「あまり南のほうには行かないので気にしたことはなかったが……今度、様子を見に行ってみよう」
「え、それで、その亀だったらどうするのよ」
「どうもしない。寝ているなら、寝かせてやればよいだろう?」
「ま、まぁ、そうかな?」
山になるくらいの亀の大きさっていうのは、想像もつかないけれど、動きだしたら、土砂崩れのような自然災害が起こりそうな気がする。
「ええ、ぜひ、そのまま、寝かせておいてください」
前公爵は真剣な顔で頷く。
どうも、山を挟んだ、南の小国家群というのが、最近、きな臭いそうで、安易に交通の便がよくなると、厄介なことになるんだそうだ。
自然災害同様、厄介事は、ぜひ、回避していただきたいところだ。





