第685話 メイド服は現地の人のほうが似合う
やってきた馬車がエクスデーロ公爵家の物だとわかった村人たちは、ホッとしたようで、買い物はそのまま続けられている。
そんな中、マグノリアさんと孤児院の年長組のベシーとリンダが私の元にやってきた。
「何か、お手伝いすることはございませんか?」
「あ、よかった! 声をかけようと思ってたんだ」
これから、前公爵とお話をすることになるので、お茶をいれてもらいたいことを伝えると、真っ青な顔になる。
さすがに現時点で村の中に入れるわけにもいかないので、まずは教会の応接室で対応するしかない。そこなら、マグノリアさんたちも使い勝手がわかっているので、任せられると思ったのだ。
それでもしばらくは、無理です、私たちなんて、などと言っていたけれど、獣人の村人たちにお願いできないし、魔道具バカのモリーナなんて、もってのほかだし、と言ったら、最後にはしぶしぶながら受けてくれることになった。
「あ、紅茶やお菓子は、私が用意してあるので、サーブするのだけお願いしたいんです」
紅茶もお菓子もあちらで買ってきておいた。
紅茶は自分用には絶対買わない高級ブランド品。お菓子もこの時のためにと、わざわざショッピングモールまで行って買った、某高級ホテルの名前のついたクッキーの詰め合わせだ。
やっぱり、美味しい物となると、どうしてもあちらで手に入る物には敵わない。
「え、あの、私たち、こんな格好ですけど」
ベシーが自分の着ているワンピースのスカート部分をつまんで見せる。
マグノリアさんが着ているのは、草木染で染められた淡いグリーンのワンピース。ベシーとリンダは、濃淡の違う黄色いワンピースだ。
ベシーたちは今日もすでに子供たちの世話をしたり、オババの手伝いで薬草を扱ったりしているので、ちょっと汚れがついてしまっている。魔道具の洗濯機で洗えば落ちるけど、今すぐというわけにはいかない。
「フフフ、実は、用意してあるんだよねぇ」
私はタブレットの『収納』から一着のワンピースを取り出した。
白い丸襟にAラインの真っ黒な七分袖のワンピースは、私の背丈だと踝にかかるくらいのマキシ丈。マグノリアさんたちは私よりも少し大きいので(こちらの大人の女性たちは、私より大きい人が多い)、少し短いかもと思いながら、マグノリアさんに実際渡してみて体に当ててもらったところ、ミモレ丈くらいだった。
これならメイド服っぽく見えるだろう。
「かわいい!」
「綺麗!」
ベシーたちは大盛り上がり。確かに、マグノリアさんに似合っていたし、三人とも似たような身長なので、たぶん大丈夫だろう。
「あと、これ、エプロンね」
縁にフリルのついた白いウエストエプロン。
コスプレかよ、というツッコミは無しで。だって、こちらには、普通にメイドさんだっているのだもの。
三人がキャッキャと嬉しそうなので、それぞれに服とエプロンを渡して着替えてきてもらうことにした。
彼女たちが着替えて戻ってきた時には、村人たちだけではなく、グルターレ商会の面々や護衛の人達も、三人に視線が集中。
可愛いから気持ちはわかる。
というか、メイド服はやっぱり平たい顔族よりも、現地人のほうが似合う、とつくづく思った(遠い目)。
――おや?
なんだか『焔の剣』のリーダー、ドゴールさんが目をクワッと見開いて、マグノリアさんにくぎ付けになっている。
――これは、もしかして、もしかする?
ちょっとだけ、そんなことを考えて、ニヨニヨしていると。
「サツキ様、公爵家の方が門の前にいらしてます!」
見張り台にいた獣人が、声をかけてきた。





