第680話 グルターレ商会がやってきた(2)
村の中央、ネドリの屋敷前の広場に、フリーマーケットのようにグルターレ商会が運んできた品物が並べられている。
ちょっとしたお祭りのような空気に、村人たちは楽しそうに見て回っている。
ママ軍団は食料の他に、布や糸、それを染める染色剤に目が向いているようだ。その中には孤児院の女の子たちも含まれる。最近は、大きい女の子たちは、村の女性たちから服の仕立て方などを習って、小さい子たちの服はもちろん、自分たちの服を縫うようになったらしい。不器用な私からしたら、尊敬モノだ。
一方で獣人の男性やドワーフたちは、武器や防具を手に、ああでもない、こうでもないと楽し気に話している。話の感じだと、思ってたほどのレベルではないようで、村の男たちの武器(当然、うちのドワーフたちが作った物)のほうがいい、と言う話になっているようだ。
中でも盛り上がっているのは、魔道具を取り扱っているところで、ギャジー翁と大地くんが、商品を手に、喧々諤々とやりあっている。
話の内容は、私が聞いてもわからなそうなので、そのままスルーだ。
大人たちが品物に夢中なのに対して、子供たちはというと、冒険者たちへと群がっている。
今回の護衛もいつもの人・獣人・エルフ混合のBランクパーティ『焔の剣』の面々だ。
「すごい! おっちゃんたちは、オーガとたたかったのか!」
いきなり物騒な魔物の名前があがっている。
「ああ、護衛の途中で珍しく遭遇してな」
「滅多に街道までは出てこないもんなんだが、凄い雨が続いたせいからかな」
「それは本当か」
護衛たちの話にくいついたのは、子供たちだけではない。
樽の中に入っていた武器を手にしていたボドルが、真面目な顔で護衛に問いかけてきた。
「ああ、でもそれも獣王国内での話だ。それに、キッチリ討伐してきたからな」
「それならいいが。お前たちはどこを経由してきたんだ」
護衛のリーダーのドゴールとボドルが真面目な顔で話しながら、その場を離れていく。
普段の村の周辺は、ホワイトウルフたちがいるので、大きな魔物が近寄ることはないけれど、護衛の話を聞くと大きな魔物たちがこちらにやってこないとも限らない。
「大丈夫ですよ」
どうも不安そうな顔をしていたのか、『焔の剣』のメンバーの一人のエルフが穏やかな声で話しかけてきた。
「すでに二日ほど前のことです。それに、この村周辺はホワイトウルフたちがいますから(俺たちですら瞬殺されそうなんだから)」
「だいじょうぶだよ! おれたちが、サツキさまをまもるぞ!」
「そうだよ!」
いつの間にかテオとマルが、ガッシリと私の腰に張り付いている。
「フフフ、ありがとう」
「まかせて!」
「まかせてー!」
『まかせてー!』
『まかせろだぞー!』
テオたちだけではなく、孤児院の小さな男の子たち(ついでに精霊も)まで、キャッキャと言いだして、騒々しくなったところで。
「見たことのない馬車が来るぞ!」
村の中の見張り台にいた獣人が、大きな声で村の中に響いた。
和やかだった村の空気が、一気に緊張感でピンと張り詰めたものに変わった。





