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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
色々リニューアルするぞ、な夏

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第677話 エイデンのお城にやってきた

 私はシロタエの背に乗り、エイデンの城のある山の方へと向かってもらっている。

 エイデンの城までは、かなり細い獣道があるようで、シロタエの進みには迷いがない。高い木々に囲まれた山の中は、メンテナンスされていないから、薄暗い。


「うわ~っ」


 急に木々がきれて岩場が現れた。明るい日差しに、目が一瞬見えなくなる。


『あの山の斜面にあるのがエイデン様の城……の跡みたいですね』


 シロタエの声で山の上のほうに目を向ける。

 エイデンの城は、うちの山のビャクヤたちの巣に行く時に見る程度で、全体像はよく知らなかった。巣のところから見えたのは、いくつもの尖塔がにょっきりと生えている古い感じのお城で、たぶん、それも一部なんだろうなぁ、と思っていた。


「……どうやったら、ここまで崩れるの?」


 私たちが立っているところから見えるのは、まさに残骸といえるもの。

 元の城の形はわからないけれど、前に見た尖塔は当然なくなり、廃墟というよりも、古代遺跡みたいに、ゴロゴロと岩や石が転がっている。他の石や岩は飛び散って、どこかにいってしまったようだ。

 城の周辺の木々は、黒く炭化していて、火事になっていたのも想像できる。


「神の怒りに触れたんじゃ、と言われたら、そう思えるくらいだわ」


 イグノス様がやるとは思えないけど、そう思わせるくらい、破壊されている。

 あの雷の音は相当だったけど、ここまで壊す威力のあるものなのか、と思ったら、こちらの雷が怖くなる。

 うちは結界をはっていたけど、エイデンの城はしていなかったのだろうか。


『あ、あそこにエイデン様が』


 シロタエの声で、城の残骸の中に人の姿で立ちすくんでいるエイデンの姿に気が付く。そんなエイデンの所へと運んでもらう。


「エイデン!」


 彼の背後にシロタエが立ったというのに、ぴくとも動かないので、思わず声をかけた。


「あっ」


 振り返ったエイデンの顔は、滂沱の涙でびしょびしょだ。残念イケメン具合が倍増している。


「さ、さつぎぃぃぃ~」


 私の顔を見たとたん、また涙が溢れだして、私たちのほうに駆け寄ってきた。


「ちょ、ちょっと、危ないんだけど!」

「びぇぇぇぇ」

「聞いてない~! ぐぇぇぇっ」


 シロタエの上に乗っていたのに、見事にタックルされ、抱きかかえられる始末。


 ――し、死んじゃうぅぅ~!


『エイデン様! 五月様が!』

『エイデン様! 五月が死んじゃうよ!』

『死んじゃう! 死んじゃう!』


 シロタエだけではなく、後をついてきていたウノハナとシンジュまでが、エイデンの足を噛んで止めようとしてくれた。


「はっ! す、すまん。だが、だがぁぁぁ」


 パッと私を離したかと思えば、ガックリと膝をついてしまったエイデン。


「た、助かったわ……ありがと」


 はぁはぁ、と息を整えている私だけど、エイデンはずっとグズグズ泣いている。

 エイデンだったら、こんな城、もう一度作れるんじゃないの? と思うのだが。そこまで思い入れがあるものだったのか、と不思議に思う。

 いつまでも泣き止まないエイデンに、「また直せばいいじゃない」と声をかけたのだが、エイデンは首をふり、それ以上は答えない。


 ――だったら、この石、うちで使ってもいいかな。


 エイデンには悪いけど、あちこちに散らばっている石や岩に目を向け、考えてしまう私である。


          *   *   *   *   *


 実はエイデンにとって、この城は聖女との思い出の城であった。

 魔物討伐の旅で各国を巡る中で、彼女が気に入っていた城だったのだ。

 エイデンが手に入れた時には、すでに国は滅び、人も住んでいない土地になっていたが、その中でこの城は多少崩れてはいても残っていた物だったのだ。

 それをトッてきて、この山に移築したのだ。


 ――これで、もう聖女との思い出の物は全てなくなってしまった。


 ボロボロと涙を流すエイデンに、無言でハンドタオルを渡してきたのは五月。

 まったく外見は別物なのに、元聖女の五月の姿に、かつての聖女の姿が重なる。


 ――いい加減、前をむいたら?


 かつての聖女が、呆れたように言っている気がする。


「ありがとう」


 ハンドタオルで涙で濡れた顔を覆う。


 ――そうだな。こうして、五月のそばにいるのだから。


 グイグイと涙を拭いて立ち上がると、城の残骸へと目を向けるエイデンであった。

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