第666話 石壁と石畳
タブレットの『収納』に入っていた家具類を、大きいログハウスの中に設置していく。
当然、足りない物はたくさんあるのだけれど、マグノリアさんたちが準備してくれるというのでお任せすることにした。
ログハウスの中に村の女性陣たちやドワーフが入ってわちゃわちゃしている。
相手が人族の、それも前公爵という高位の貴族なのが心配ではあるものの、ドワーフたちも手伝ってくれるから、けして質の悪い物になることはないだろう。
素材も、こちらの物だけではなく、あちらで買ってきた物も渡している。あんまり良すぎる物は、ギャジー翁に止められたので、問題はないはずだ。
宿舎を建て終えた私は、今度は宿舎の周りの石垣をリニューアルすることにした。
周囲は防風林の針葉樹に囲まれてはいるものの、石垣が低いので、近くまで来れば中が丸見えなのだ。
それにゴロゴロとした石で組まれたものなだけに、見た目が不安。
簡単な衝撃で崩れそうに見えるのだ。実際は、『タテルクン』で作ったせいか、思っている以上に頑丈だったけど。
前回は急ぎで、ありものの材料で準備したから仕方がなかったとはいえ、今回は多少時間も材料も余裕があるのだ。
「石垣を『収納』して……さて、どうしようかな」
石垣がなくなると、随分と見晴らしがよくなる。
水堀の先には村の石垣が、魔物除けのために植えたマギライの木を越えたところに見える。
やっぱり、村の周辺を囲っているのと同じような高さにしたほうがいいかもしれない。
「じゃあ、ポチッとな」
ドーンと宿舎の敷地の周りを、背の高い石壁が現れる。
「あ、ちょっと、近かったかも」
実際に石壁を建ててみると、ログハウス(大)だったせいか、石壁との距離が思っていたよりも近くて、狭く感じたのだ。
そこからは微調整をして、前の敷地よりも少し広くした。
――まぁ、こんなもんかな。
敷地の中をノワールとシンジュが追いかけっこをしている姿を、のほほんと見ていたのだけれど、彼らの周りを土埃が舞っている。
「うわ、埃っぽい」
最近の暑さのせいもあってか、日当たりのいい敷地の中の地面は乾燥気味だ。防風林のほうはと目を向けると、あちらも少し乾き気味。
――せめて、馬車の通るところだけでも石畳にしよう。
今度は『ヒロゲルクン』を立ち上げて、道づくり。宿舎の敷地の中央を石畳が伸びていく。
せっかくなので水堀を超えて、そのまま村の門のところまで石畳を伸ばしていく。これで、雨の日でもぬかるんだ道を歩かずに済むはずだ。
「ふわー、やっぱ、サツキ様はすげぇ」
「何度見ても、すげぇ、としか言いようがない」
私の後をついて歩いているザックとマークの小さな声が聞こえたが、私は苦笑い。
次はどうしようか、と考え込んでいると、村の門が開いた。
「あ、サツキさま!」
村人の誰かが開けてくれたようで、門から顔を出しているのは、孤児院の年少組の子供たち。その中で一番年上のエフィムくんが、私を見つけて声をかけてきた。
「どうしたー?」
「あのねー」
「あのねー!」
「だいちにーちゃ!」
「だいちにーちゃんがきたー!」
子供たちは嬉しそうに声をあげた。
どうも大地くんがやってきたらしい。稲荷さんからは、何も聞いてなかったんだけど。
私は慌てて村のほうへと戻ることにした。





