第663話 美幼児&美幼女
カチャカチャと複数の食器の音が、ログハウスの中に響く。
リビングには、離れ用にドワーフに作ってもらった四角い卓袱台。ちょっと大きいので、うちのリビングが狭く感じる。
その卓袱台には、キッチン側を私、私の右斜め隣には三歳児のノワール、左斜め隣には5、6歳くらいの女の子……人化したマリンが座っている。
昨夜、光に包まれた後に現われたマリンは、なぜか人化してしまっていたのだ。
彼女もなんでこうなったのかわからず混乱しまくり。ノワール同様に戻り方がわからず、最後には泣きだす始末。
真っすぐな黒髪が腰くらいまで伸びていて、白い肌にアイスブルーの瞳。さすがにノワールの服を着るわけにもいかないので、私の部屋着のTシャツとショートパンツを着させている。
それにしても、美幼女っていうのは、何を着ても似合うんだな、とつくづく思う(遠い目)
昨夜散々泣いたのに、そのあとが残っていないのは不思議だ。
なぜ、マリンのほうが年上の容姿なのか、と思ったら、実際、マリンのほうが年上だったらしい。うちにやってきた時の姿が小さかったからか、ノワールよりも小さいのかと思っていた。聖獣というのは成長速度が違うようだ。
同じく黒い髪だけど天然パーマで浅黒い肌のノワール(こっちも美幼児)と見比べると、姉弟に見えなくもない……か?
「おかわり!」
ノワールが小さな手で差し出すマグカップ。
「ちょっと待って」
マグカップを受け取ると、背後のキッチンに行ってコーンポタージュのカップスープの粉を入れてお湯を注ぐ。
「五月、私も欲しいわ」
「はいはい。ノワール、熱いから気を付けてよ」
ノワールにマグカップを渡して、マリンのを受け取る。
しかし、私の注意など気にせず飲むノワール。ごくごく飲んでいる様子からも、人の姿になってはいても、熱の感じ方は違うのかもしれない。
ノワールとマリンの朝食は、スクランブルエッグとソーセージ、ロールパン(大量買いしておいたやつ)に自家製苺ジャムを塗ったもの。箸が使えないので、スプーンやフォークで食べているのだ。
ノワールにしろ、マリンにしろ、別に食事をとらなくてもいいと言っていたが、そうは言ってもと、黒猫の姿の時のマリンにはキャットフード、ノワールの時は生肉と、私の食べる物とは違うものをあげていた。
だからといって、今の姿で同じ物をあげるわけにはいかない。
実際、卓袱台に並べだしたら、食べてみたかったの、とマリンは嬉しそうだったし。
「うまいな、これ」
「そうね」
スプーンを握って、山盛りのスクランブルエッグを口に運ぶノワールと、スプーンをしゃぶっているマリン。行儀が悪いと言うべきなのかもしれないけれど、にこにこしながら食べている二人の姿が可愛いくて、ニヨニヨしてしまう。
二人とも口の周りに、スクランブルエッグと、苺ジャムをつけまくりだけど。
そんな中、一匹だけ、ご機嫌斜めなのはセバス。
リビングの片隅で、あのなんともいえない目つきで、私たちの方を見つめている。





