第662話 マリンの人化
ログハウスの中に入ると、すぐに人感センサーに反応した玄関のライトが灯る。
これはモリーナの新作だ。ガーデンライトの次に魔道具化したのがコレ。
作り始めた頃はどうしても大きなサイズになってしまったけれど、ようやくあちらで買ってきたサイズと同じライトが完成したのだ。
ただ、必要な材料の中にはなかなか手に入らない物があって、今のところ大量生産は難しいらしい。当然お値段もいい感じのはずなのだけれど、賃借料だと言って、渡されてしまった。
ちなみに、前に使っていたのは、モリーナに分解されてしまっている。(遠い目)
そのうちギャジー翁が直してくれるかもしれない。(遠い目)
「そうだ、ハノエさんたちからノワールにって、新しい服を作ってくれたよ」
私は『収納』から、服を取り出して、テーブルの上に並べる。ノワールの目がキラキラしだした。
「どれも似合いそうだけど、どれが好き?」
「んー、これ!」
シャツ三枚(緑、黄色、青)のうち、手に取ったのは黄色。さっそく、ハーフパンツと一緒に着替えさせる。
「うん、似合う、似合う」
鞄からスマホを取り出して、記念撮影。どこぞの親バカか、というくらい撮りまくる。それに合わせてポージングするノワールも、あざとかわいい。
『あら、その黒いのは』
マリンが黒いドラゴンのアップリケに気が付いた。
「それ、ノワールなんだって。上手じゃない?」
『ふーん』
ちょっと羨ましそうなマリン。同じ黒なのに、猫じゃないのが気に入らないのかもしれない。
「今度、マリンのマークも作ってもらおうか」
『ホント!』
とたんに機嫌がよくなる。服を着るのはノワールなんだけど、と思ったと同時に、ふと、マリンも人の姿になれたりしないのかしら、という考えがよぎる。
今の姿は可愛い黒猫のようだけれど、こう見えて彼女は聖獣バスティーラ。『聖獣』ってつくだけに、色んな力がありそうだと思ってしまった。
「ねぇ、マリン」
『うん?』
「マリンは人の姿にはなれないの?」
『……考えたこともなかったわ』
「ノワールが人の姿になったのに?」
『どうやったら元に戻るのかと、そっちばかり考えてたのよ』
マリンは体の大きさを変えられるというので、実際、目の前で変えてもらった。
可愛い黒猫から黒豹サイズになってびっくり。触ってみたらベルベットのような肌ざわりだから、思わず抱きついてしまう。グルグルと大きな喉の音が振動と一緒に伝わってくる。
『でも、人の姿はどうやったらいいのか、わかんないわね』
「ノワールは、泣きまくって気が付いたらこの姿になったんだっけ?」
「……うむぅ」
そう言われて、拗ねた顔になるノワール。
そして、いまだに元に戻れないでいるという。エイデンが出来るんだったら戻してあげればいいのに、自分でやり方を見つけないと意味がないとか言って放置しているそうだ。
「せっかくだったら、ノワールとお揃いの服を着ている姿を見て見たかったなぁ」
そう言って彼女の背中を撫でていたら、その背中から小さな光の粒が浮き上がってきた。
「へっ?」
『えっ?』
「メッ?」
「ふえっ?」
マリンから浮いていく光の数が、徐々に増えていく。
「ちょ、ちょっと何これっ!?」
『私のほうが知りたい~!』
光で充満している部屋で、マリンの叫び声が響いた。





