第660話 ママ軍団、ヤル気満々
ケイドンの街の買い出しを終えて、村に無事に帰ってきた。軽快に走る馬車のおかげで、日没前には戻って来れた。
馬車から降りたとたん、最初に捕まったのはザックスとマーク。
街の様子を聞きたがった村人たちによって、両サイドで腕をガッチリ組まれた二人は、引きずられるように大きな東屋のほうに連れていかれ、待ってましたとばかりに、そのまま宴に突入した。
エイデンはドワーフたちと武器や防具の話で盛り上がっているようで、ガハハ、ワハハと笑う声が聞こえてくる。
ギャジー翁の活躍の話題では、オババの薬の話になり、お互いに褒め合っていた。さっさと逃げてきたので、今回は面倒ごとに巻き込まれはしなかったけれど、次にザックスとマークが行ったときは大丈夫かな、と、少しだけ心配になった。
私のほうは、買ってきた荷物を出しながら、村の女性陣へと渡していく。
キャサリンや前公爵といった、貴族が来た時に使うために、どんな物があるか見ておいてもらうためだ。
「布はやっぱり、サツキ様がお持ちになるもののほうがいいですね」
ハノエさんがママ軍団(最近は、ボドルの妻リリスとコントルの妻ケイトも含まれる)と一緒に、布の束に触れながら話している。
「ああ、まぁ、仕方がないよねぇ」
村人たちは、私があちらで買い求めていることは知っている。
どういう風に解釈しているかはわからないけれど、自分たちが行けるような場所ではないことは理解しているけれど、何か買ってきてほしいと頼まれたことはない。
私の方が買ってきて、使って欲しいと頼んだり、サンプルになりそうな物を買ってきて、こちらの物で作ってもらったりしてるのだ。
「そうそう、サツキ様、ノワール様のお洋服できましたよ」
実は、なぜか子供(三歳児くらい)の姿になってしまったノワールのための服をママ軍団にお願いしていたのだ。
子供の姿から戻れないせいで、今は我が家で暮らしている。今日は家でマリンたちとお留守番だ。
マルママが見せてくれたのは、色違いのシャツ三枚(緑、黄色、青)と私が買ってきたジーンズ生地のハーフパンツのセット。
生地が残っているようだったら、子供たちに使ってもらっても構わないといったら、感謝されてしまった。
「いいんじゃない? このアップリケ、ノワールかな」
シャツの胸にはデフォルメされた黒いドラゴンのキャラクターが縫ってある。
「サツキ様が描いてくださったのを参考にしたんですけど、よかったですか?」
「ええ? そんなの、いつ描いたっけ。そもそも、私の絵なんて参考にならないでしょ」
むしろ、マルママのセンスだと思う。だって、本当に可愛いのだ。
「よろしかったら、子供たちの服にも縫ってもいいでしょうか」
おずおずと聞いてくるマルママだったけど、私が断る理由もない。そう答えたら、ママ軍団に喜ばれてしまった。
その話の流れで、今日買ってきた布で、お客様用に建て替えるログハウスで使う布関係の物を作るのをお願いした。
自分たちでいいのか、と聞かれたけれど、彼女たちの実力は知っている。
手間賃もちゃんと払うと言ったら、とんでもない、と断られ、今回も残った素材だけでいいと言われてしまった。
何を作るかで盛り上がっている彼女たちの姿を見て、どこかで、彼女たちに報いないとなぁ、と思った私なのであった。





