<ザックスとマーク、そしてエイデン>
ケイドンの街の冒険者ギルド。
エイデンが解体所に大量の魔物を出して、大騒ぎになっている。その一方で、ザックスとマークのランクがCランクになっている話を聞いて、受付の女性たちがざわついている。
実際、ケイドンの街を出るまでは、二人ともEランクの冒険者だった。
獣人たちの村に住み、彼らと同じ食べ物を食べ、身体が徐々に出来上がると、今度は彼らに鍛えられ、いつの間にか共に冒険に出ることになった。
ほとんどは獣王国の魔の森の討伐に行くので、帰りにケセラノの冒険者ギルドに行く。そのおかげもあって、順調に冒険者のランクをあげて、つい最近Cランクまでになった。
普通、人族の16歳でCランクに到達できる者は、ほぼいない。
それも1年足らずで、だ。
――俺たちは、恵まれてる。
自分たちの右手につけているミサンガに目を向ける。
これは村の冒険者の若者たちに、必ず渡される五月特製のミサンガだ。
無事に村に戻って来れますように、という五月の思いが込められたミサンガのおかげで、今のところ、村の冒険者たちが戻ってこれなかったことはない。
今回は、エイデン温泉(仮)の地の近くで火山亀の繁殖の時期にぶつかったこともあり、エイデンの手伝いに駆り出されたのだ。
普段はエイデンの魔力や稲荷の神力のおかげで魔物は近寄りもしないのだが、繁殖期ともなると、違ってくる。
万が一、五月が温泉に来てた時に遭遇でもしたら、と思ったエイデンと、子供や嫁たちが襲われたら、と獣人の夫たち、いい素材が狩れると大喜びしたドワーフたちによって、火山亀の多くが狩られまくった。
しかし、その騒ぎにアースドラゴンが三頭もやってきたのだ。
一頭は獣人たちが狩り、残り二頭はエイデンの手であっという間に終わってしまった。
その間、ザックスとマークは、獣人たちの邪魔にならないように、周辺の小型の魔物(一角ウサギや岩ウサギな)を狩っていた。
さすがに今の自分たちの実力では、アースドラゴンと戦う獣人たちの足手まといになる自覚があったからだ。
五月にいい土産ができたと大喜びだったエイデンだったのだが、村に戻ってみれば、こんな大量にどうするんだ、それにこんな大きなの二頭もいらない、と五月本人から拒否されてしまった。
「せっかくなら冒険者ギルドに卸して来たら」
エイデンが面倒そうな顔になったのを見た五月。そばにいたザックスたちを見て、苦笑いを浮かべる。
「あ、あー、そうだ。私も久々にエイデンの馬車に乗って街に行ってみたいなーって思ったんだー」
棒読みな五月ではあったけれど、馬車に乗っていきたい、と言われただけでご機嫌になるエイデン。
しかしケイドンの街についてみれば、五月とは別行動になる。なぜかモリーナとギャジー翁が同行して、三人で魔道具屋に行ってしまったおかげで、エイデンの機嫌はだだ下がりになったのは言うまでもない。
冒険者ギルドに卸した魔物のほとんどは買取になったので、さっさと受付で実績の登録をしてもらう。
「(ほんと、サツキ様、大好きな)」
「(チョロいしな)」
クスクス笑う二人だったが、エイデンを侮っているわけではない。
「おい、終わったんだったら行くぞ」
「はいっ!」
ギルドのドアを出て行こうとするエイデンの後を、慌てておいかける二人であった。





