<ケイドンのギルド職員>(1)
朝一番に大勢の冒険者たちが依頼を受けて、飛び出していく。しかし、その反動のように、昼間の冒険者ギルドの受付窓口は暇だ。
受付のカウンターの所で、のんびりと伝票整理しているのは、ケイドンの冒険者ギルドの受付担当のシンシア。他の女性スタッフは、暇すぎておしゃべりに講じている。
しかし暇ではあっても、やらなきゃいけない仕事はあるのだ。その証拠に、彼女たちの机には各種伝票が山になっている。その多くは昨日の夕方上がってきた処理内容についてだろう。
ため息が出そうになるのを、グッとこらえてシンシアは、一枚の伝票に手を伸ばそうとした時、ギルドの扉が開いた。
そこに立っていたのは、以前シンシアが冒険者登録をしたことのある、長いストレートの黒髪のイケメンだった。
すでにいい年齢に見えたのに、ギルドに登録するのは初めてというので、覚えていたのだ。
「え、ちょっと、カッコいいんですけど」
「ヤバ、こっち来ないかしら」
「誰、誰?」
おしゃべりしていた女性スタッフたちが、慌てて髪を撫でつけたり、彼のほうへと視線を向けたりしている。
しかしシンシアが気になったのは、黒髪のイケメンよりも彼の後をついてきていた少年二人のほうだった。
――もしかして、ザックスとマーク!?
ザックスとマークも、このギルドで冒険者登録を行ったし、何度か依頼の受付や達成報告も受けている。
しかし、ここ最近、姿を見ていなかったので、何かあったのかと、気にしてはいた。
冒険者は、何があるかわからない。特に、若い時などは、無謀な行動を起こして帰らないこともあったからだ。
――それにしても……二人とも、大きくなった?
シンシアの記憶にあるのは、言ってはなんだが痩せ細っていて、魔物相手なんてできそうもない姿。薬草類の採取や、街の中での雑用の手伝いくらいしかできなさそうに見えた。
しかし、一緒にいる黒髪のイケメンがかなりの高身長だから、比較するのは難しいけれど、今の彼らはガッチリした体格で、背も伸びているようだ。
――それに、着ている物も違う。
革の軽鎧は新品ではなさそうで、かなり使い込まれていて、いい艶が出ている。腰に下げている長剣も、しっかりした物のように見える。以前の彼らだったら、その重さに負けていたかもしれない。
三人は依頼票の貼ってある壁のほうへと歩いて行くと、何枚かの依頼票を剥がし、受付窓口へとやってきた。
「魔物の納品って、ここじゃできないんでしたっけ?」
ザックスが代表してシンシアに声をかけてきた。
「え、ええ。解体所はあっちの扉から行けるわ。その、依頼票は」
「ああ、今回出すのが依頼の中にあったんで。まずは、あっちで出して確認してもらってからでもいいですか」
「あ、はい! 私が案内しますっ!」
受付の中でも若手の女性スタッフが手をあげて、さっさとカウンターから出て行った。その後ろを三人がついていく。
「あの子、やるわね」
「チッ、あんなお子ちゃまなんか、相手にしないわよ」
他の女性スタッフたちの文句を聞きながら、シンシアは依頼票の内容のことを思い出す。残っていたのは、Bランク相当の魔物の討伐だったはず。以前いた上位ランクのパーティが他の街に移ってしまって以来、塩漬け案件になっていた。
キャァァァァァ!
ウォォォォォォ!
解体所のほうから、女性スタッフの叫び声と男性の雄叫びが聞こえた。
一番近いところに座っていたシンシアは、慌てて解体所の中へと飛び込むと、そこには巨大なアースドラゴンが一体、解体用のカウンターに乗っていた。
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近況ノート更新しました。
『山、買いました3』口絵公開(2)
https://kakuyomu.jp/users/J_emu/news/16818093077250800134





