<セバスとマリン>
ログハウスの1階、リビングのひんやりした床から、むくりと身体を起こすマリン。
もう少しすればお昼になる時間帯。カーテンごしに見える外の様子は、かなりいい天気のようだ。
そんな中、五月は村人たちと共に山の中を間伐しまくっている。キャサリンたちがやってくる前に、少しでも山のメンテナンスをしておきたいのと、村のリニューアルにむけての材料確保をしているようだ。
昼間の家の中にはマリンとセバスの二匹しかいない。
『ふあ~』
お尻をおもいきりあげて伸びをする姿は、普通に黒猫にしか見えない。
そんなマリンのそばで、へそ天で寝ていたセバス。ログハウスの中にいることもあって、大きさはマリンと同じくらいだ。
動き出したマリンに気付いて、薄目をあける。
「……メェェェ(でかけるのかい?)」
『うん? そうねぇ。久しぶりにお出かけしようかなって』
「メェェ?(暑いのに?)」
『そりゃぁ、あんたは厚い毛に覆われてるから暑いかもね』
窓を閉め切っていて、空調もないログハウスの中。普通なら、熱気がこもってしまうはずだが、そこは『タテルクン』で建てられたログハウスのせいか、あまり暑くはない。
しかめっ面のセバスをよそに、マリンはテテケテと玄関のドアの前までいくと右前足をひょいっと動かす。それだけでドアが勝手に開いてしまう。さすが聖獣である。
『うっ、本当に暑いわね』
熱気がむわっと部屋の中に入ってきて、マリンは顔をしかめる。日差しがさしている地面は、かなり熱くなっているだろう。
「メェェェ?(これでもいくのかい?)」
『むぅ……』
横たわったままのセバスの言葉に、マリンも一瞬躊躇するも、ぴょーんと飛んでウッドフェンスのそばの日陰のところに着地する。
『ここだったら地面は熱くないわ』
「メェェェ……(物好きだなぁ)」
『マリン』
『マリ~ン』
ログハウスの敷地では、精霊たちが思い思いの場所で寛いでいる。水の精霊たちは池の周り、土の精霊たちは畑の周り、光の精霊たちはソーラーパネルの周り、風の精霊は上空を風に乗って。この場にいないのは火の精霊くらいだ。
そんな中、ログハウスから出てきたマリンに近寄ってきたのは風の精霊たち。
『でかけるのかい?』
『いっしょにあそぶ?』
『ふふ、いいわね』
風の精霊たちと楽し気に会話をしているマリンの様子に、ムッとするセバス。
のそりと立ち上がったセバスは、マリンの真似をして、同じようにぴょーんと飛んで後を追いかける。
「メェェェェェ?(どこに行くんだ?)」
『あら、あんたも来るの?』
「メェェェェェ……(来ちゃ悪いのかよ)」
『いえ、別に(素直じゃないわねぇ)。そうね。少し、山の中をお散歩したら……あんたの落ちてた場所にでも行ってみる?』
マリンの言葉にセバスの目がキラリと光る。
「メェェ!(いいね!)」
行く気になったら、即行動。
風の精霊たちがログハウスのドアを勢いよく閉めると、二匹は軽やかな足取りで山の斜面を駆け上がっていった。





