第650話 王都からの使者(2)
封筒を受け取ったのはいいものの、いまだにタブレットの『翻訳』を手放せない私。
「できれば、そちらのお返事をいただきたく」
「あ、はい。えーと、一度、家に持ち帰ってからでもよろしいですか?」
「ええ、構いません」
さすがに彼らの目の前で、タブレットを使うわけにもいかない。ありがたく受け取るだけ受け取る。
「そちらのお手紙の中には、前公爵様からのお手紙も入っております」
ヴィクトルさんの言葉に、タブレットの入っているバッグの中にしまいこむ手が止まる。
「私は普段は前公爵の元で執事長をしておりまして、今回のお手紙を届ける役目を任されました」
――なんで、執事長なんて役目の人に、そんな仕事をさせるの!?
思わず、びっくりした顔でヴィクトルさんを見ると、ホホホと声をあげて笑っている。
実は、このヴィクトルさん、ピエランジェロ司祭のご学友だったのだそうだ。
「司祭がこちらにいらっしゃるという話を聞きまして、せっかくの機会と思い、主に許しを得て参りました」
学園を卒業した後は、それぞれ道が異なったので、ほとんど連絡を取り合うこともなかったらしいが、お互いの状況はなんとなく把握はしていたらしい。
ちなみに背後に立ってた二十代の男性は末の息子さんで、ロイドさんというそうで、ヴィクトルさん同様、前公爵のところで執事をしているそうだ。
だから見覚えがあって(キャサリンたちを迎えに来た御者もサリーの叔父さん)、この二人の顔立ちが似ていたのね、と納得した。
その後は、サリーのお祖父さんのヴィクトルさんから、キャサリンをはじめとした近況を伺った。
「王都の屋敷で執事をしております息子からの話にはなりますが」
キャサリンも12歳になったということで、王都にある貴族の学園に通うようになったそうで、それなりにお友達もできたらしい。学園には婚約者の王太子殿下も在学中で、二人は仲良くしているそうだ。
それを聞いてホッとする。
去年の王太子殿下の取り巻きの中のめんどくさい方々が、二人の仲を邪魔していなければいいな、と思っていたのだ。
そのめんどくさい方々についても聞いてみたら、 具体的な名前は出てこなかったけれど、何やら数名、入れ替わりがあったらしい。名前を言われても、覚えてないから、わからなかっただろうけど。
サリーも10歳になったけれど、まだ屋敷の中でも最年少なのだそうだ。
任される仕事は多くはないけれど、その頑張り具合から、メイド見習いの『見習い』が外れそうなのだそうだ。
そう話すヴィクトルさんは、まさに好々爺といった顔だ。ロイドさんも、少しだけ顔が緩んでいるように見える。
話を聞いている間に、さりげなくレキシーくんがお茶を出してくれていたのだが、いつのまにか飲み切ってしまったようだ。
「サツキ様、彼らの世話は私どもでしますので、お気になさいませんよう」
「あ、ああ、すみません。お願いします」
私も返事を用意しないといけないことを思い出し、その場を後にした。
――問題は、どうやって手紙を書くかってことよね。
本気で、もうちょっと文字の勉強をしておけばよかったと、つくづく思った私なのであった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
大変申し訳ないのですが、今月いっぱい、休載させていただきます。
5月から、更新再開予定ですので、しばらくお待ちいただければと思います。
よろしくお願いします。<(_ _)>





