第645話 イグノス様からの大サービス
稲荷さんのほうを向いて浮いていた遮光器土偶が、ゆっくりと私のほうへと身体を向ける。
何度見ても、シュールだ。
『まったく……サツキ、タブレットで『タテルクン』を開いて小屋でも建ててしまえ』
「え、はいっ」
イグノス様に言われてバッグからタブレットを取り出して『タテルクン』を開く。
軽く『小屋でも』と言われたけれど、ログハウスの敷地にあるような物置小屋みたいなのでは味気ない。せめて、平屋の切妻屋根の建物と並んで建っても、見劣りしないようなのがいいと思う。
長屋タイプは……ちょっと違う気がする。
「え、もしかして、これ」
新しく追加されていた建物のリストが目に入った。
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〇切妻屋根木造平屋 2部屋 板の間 1000KP
〇切妻屋根木造平屋 2部屋 板の間 風呂・トイレ付き 1500KP
〇切妻屋根木造平屋 2部屋 板の間 台所・風呂・トイレ付き 2000KP
〇切妻屋根木造平屋 2部屋 畳の間 2000KP
〇切妻屋根木造平屋 2部屋 畳の間 風呂・トイレ付き 2500KP
〇切妻屋根木造平屋 2部屋 畳の間 台所・風呂・トイレ付き 3000KP
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なんと、畳の間があるではないか。
他の素材は足りているものの、残念ながら、畳がないのが痛い。
私はチラリと浮かんでいる遮光器土偶に目を向ける。
……全然、表情がわからない。でも、ニヤリと笑っている気がするのは、なぜだろう。
『今なら、サービスするぞ?』
イグノス様の言葉と同時に、タブレットがピカッと光る。
「え!」
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〇切妻屋根木造平屋 2部屋 畳の間 10000KP(素材込み)
〇切妻屋根木造平屋 2部屋 畳の間 風呂・トイレ付き 10500KP(素材込み)
〇切妻屋根木造平屋 2部屋 畳の間 台所・風呂・トイレ付き 11000KP(素材込み)
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KPは増加してるけど、素材分も含まれての値段なんて、今までのイグノス様を考えると、だいぶ太っ腹だ。よっぽど温泉が気に入ったのだろうか。
「だったら……素直にポチッとな」
建物の脇に、ストンッと勢いよく現われたのは、少し小さめの似たような切妻屋根の日本家屋。
引き戸をひいて中に入ると思いのほか広い土間があって、すぐに六畳の部屋が見えた。その奥にはシンプルな白地の襖があった。
「やった!畳だ!」
新しい畳の匂いがふわりと鼻をくすぐる。
私が選んだのは、和室二間と、台所・トイレ・風呂付き。稲荷さんの旅館ほどではないにしても、ここでも寝泊まりできそうと思ったのだ。
KPは有り余っている。一番いいヤツを選ばないなんてありえない。
「ほお、あれは『置き畳』と同じ素材ですかな?」
私の背後からヘンリックさんも覗き込んでいる。
「そう。いい匂いでしょ」
私の後をみんながぞろぞろ入ってきたので、靴をぬいで部屋にあがり、襖を開いた。
「この人数で、二間はギュウギュウになっちゃうのね」
私一人で来る分には十分な広さでも、せっかくだったら村の皆にも使ってもらいたい。
『空間拡張をすればよかろう』
「そういえば、そんなメニューもありましたね……うん?」
言われたとおりにリフォームのメニューの『空間拡張』を選ぼうとしてメニューを見ていたら、見覚えのない新しいメニューが追加されているのに気が付いた。
「ちょ、ちょっと、イグノス様、これって!」
『あ、バレだか』
バレたか、ではないのだ!
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〇任意の建物(カメラで撮影の必要あり) 1部屋追加ごとに 10万KP
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「何、これ~! 聞いてないよ~!」
思わず叫んだ私は悪くないと思う。
活動報告更新しました。
『山、買いました』3巻発売日&カバーイラスト公開
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よろしくお願いします。<(_ _)>





