第636話 朝の野菜収穫と、買い出しに向かう
ネドリとガズゥが旅立った翌日。
今日は午後からあちらに買い出しに行くために、朝早くからログハウスの畑で仕事をしている。早い時間だから、まだ少しだけ涼しい。
相変わらず、畑の土の精霊パワーは健在で、植えた翌日には大きくなっている。この畑では私が食べる分だけを育てているつもりなんだけど、毎回、たくさん生ってくれる。(遠い目)
今私が手にしているのは、大きく育ったナスだ。夕飯は麻婆ナスにする予定。有り余ったナスは、煮浸しにでもして、作り置きしておこう。
他の野菜を収穫しつつ、大きな真っ赤なトマトに目がいくと、美味しそうにトマトを齧っていたガズゥの姿を思い出した。
――今頃、どの辺りを走ってるんだろう。
子供のガズゥが大人たちと同じペースでついていくのは大変そうだ。そういえば、ダートの仲間に人族の魔法使いがいたはず。彼はどうやって獣人たちのスピードについていくのだろう? 獣人たちの身体能力は凄いのは目にしているだけに、他人事とはいえ少しだけ気になった。
昨日、村で見かけたテオとマルはガズゥがいないせいで、ちょっとテンションが低かった。
事前にガズゥの旅立ちを聞いてはいたのか、ギャーギャーと騒ぐことはなかったけれど、孤児院の子供たちと一緒に遊んでいる最中も、どこか寂しそうではあった。
「さて、これだけ採ればいいかな」
手元の籠には夏野菜がどっさりだ。いくつかは冷蔵庫にしまって、残りは『収納』に保存しようと思う。
出かける準備を終えて、玄関のドアを開けると、外は日差しは強くなっていてすっかり暑い。ログハウスの前は日当たりがいいから、一層暑いのだ。
一瞬で出かけるのが億劫になる。
今日の買い出しは、いつもの食料だけではなく、温泉用にい草の座布団と、お布団を買えれば買いたいと思ったのだ。
一応、椅子やテーブルについてはドワーフのヘンリックさんに、扇風機についてはギャジー翁に相談済み。近いうちに出来上がると思う。
ただ、い草の座布団については、こちらで素材になりそうなものがわからないので、サンプルになりそうな物を買ってこようと思っている。
ついでに、稲荷さんのところに寄っておきたい。ビャクヤのフェンリル化について、聞いておこうと思っていたのだ。
「行くかっ!」
玄関先で気合の声をあげる私に、マリンは長い尻尾でお見送り。セバスは無反応。
ログハウスの中はひんやりしているので、出たくないのはわかるけど、玄関先すらも近寄らないとかって、それはどうなの、と思う。
軽自動車に乗り込み、あちらへと向かう。トンネルを超え、周囲の木々の緑の濃さの中を抜けていく。窓を開けていると、風が気持ちよかったのだけれど、山を下りきったら、熱風に変わった。さすが、日本の夏。
「あっちー!」
ホームセンターの駐車場で、軽自動車から降りた途端に、声があがる。日差しもさることながら、アスファルトのジリジリとした暑さは、あちらでは体験しない暑さだ。日傘でもあればよかった。
私は急いで建物に駆け込んだ。





