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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
エイデン温泉(仮)三昧の夏

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第632話 従弟と冒険者たちと、ビャクヤ一家

 ガズゥの後を追って教会に行ってみると、教会の周りにはホワイトウルフたちがたむろしている。ウロウロしている子もいれば、寝ている子もいて、そのまま「うりゃぁぁぁ!」と撫でくり回したいところだ。

 窓の近くでお座りしていた一頭の頭を撫でてから、中を覗いてみると、ネドリとガズゥの前にしゅんとした顔で従弟たちが立っているのが見えた。

 なかなか厳しい顔をしているネドリ。あんな顔で怒られたら、私だったら泣いてしまう。

 一方で、ガズゥはガズゥで、叱られている冒険者たちをシラケた目で見ている。


 ――子供にそんな目で見られる大人にはなりたくないな。

 心の中でそう呟くと、教会のドアをそっと開けた。


「ああ、サツキ様」


 ネドリが声をあげると、他の面々もこちらに目を向けた。全員で見るもんだから、思わず、身をそらせてしまう。


「え、えーと、大丈夫かな」

「はい。ご迷惑をおかけしました。ほら、お前らも頭を下げろ」

「お、お騒がせして、申し訳ございませんでしたっ!」


 代表してネドリの従弟、ダートが謝罪の言葉を言って頭を下げると、残りのメンバーも素直に頭を下げる。


「まぁ、そうね。あんまり怪しい行動は謹んでほしいかな。本来は、うちの子たち、あんなに優しくないから」


 たぶんホワイトウルフたちは、ネドリの身内だというのをわかってたから、あれでも手を抜いていたと思う。精霊たちだって本気だったら……考えただけでも、ゾッとする。

 私の様子に気付いたのか、ダートを含む冒険者たちは血の気がひいた真っ白な顔になっている。


「で、もう行くの?」

「明日の朝には出ようかと思うのですが」

「そっか。一応、ビャクヤに声をかけているから、彼らが来るまで待って欲しいんだけど」

「わかりました。とりあえず、こいつらですが……」


 正直、彼らを村の中に入れる気にはなれないので、村の外に建ててある、去年の夏王太子たちが来た時に使った宿泊用の建物に泊まらせることにした。時々、孤児院の子たちやマグノリアさんが様子を見てくれているので、普通に使えるはずだ。

 問題は食事だけれど、歓待する相手でもない。


「食料はあるの?」


 だいぶ身軽な感じなのは、ネドリ同様にマジックバッグでも持っているのか、と思ったけれど、アレは、そう簡単に手に入る物ではないと聞いている。


「え、あ、あの、食堂のようなものは」


「ないな」

「ない」

「そういえば、そういうのはなかったねぇ」


 そもそも、うちの村にやってくるようなのは、グルターレ商会くらいだし、彼らは彼ら自身で食事を用意する。

 大きな街道からかなり離れているここには、旅人なんかも来ないから、宿も食堂もないのだ。


「じゃ、じゃあ、せめて食料を買わせていただくことは」

「それくらいなら、用意はしよう。どうせ、里に向かうのにも必要だろうからな」

「あ、ありがとうございますっ!」


 ババッと頭を勢いよく下げる冒険者たちに、私たちも苦笑い。


『サツキ様』


 いきなり、私の頭の中にビャクヤの声が響いた。


「あ、ビャクヤだ」

「外にいらしたようですね。行きましょう」


 ビャクヤの声の聞こえないネドリ。気配でわかったのか、慌てて教会のドアを開けて外に出る。


「ごめんね。遠出してたんじゃない?」


 教会の前でお座りをしている巨大なビャクヤに駆け寄り、首をあげて見上げる。

 改めてデカいな、と痛感。


『いいえ、サツキ様の為なら、どこからでも馳せ参じます』

『そうよ。いつでも言ってくださいな』


 ビャクヤのイケボの後、優しいシロタエの声。ビャクヤの背後に、一家が勢ぞろい。

 ハクとホワイトウルフのメス、ユキとスノー、ウノハナ・ムク・シンジュの三つ子と、なかなか壮観だ。ハクの番だけが普通サイズなので、彼女がいるとビャクヤ一家の巨大さが際立つ。

 

「ありがとうね。それでビャクヤ、ネドリとガズゥが白狼族の里に里帰りするんだけど、誰か一緒に行ってあげてくれないかしら」

『ほお。里帰りですか』

「うん、ガズゥの成人の儀を里でやるらしいんだけど」


 チラリと後ろを見ると、ネドリとガズゥは神妙な面持ちで片膝をついていて……ダートたち冒険者は、あんぐりと口をあけて……白目をむいて気絶していた。


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