第623話 風呂上りにコーヒー牛乳を飲みながら
腰に手をあて、一気に飲むのは、プラスチック製のコップに入ったコーヒー牛乳。
さすがに瓶に入った市販のものは持ち合わせがないので、『収納』に保存していたお手製のアイスコーヒーと、マカレナたちが毎朝届けてくれている牛乳で作ったものだ。
「あー、美味しい」
「うまーい」
「おいしいねぇ」
ベンチのようなものがない状態なので、皆、立った状態でコーヒー牛乳を飲んでいる。口の周りをコーヒー牛乳で汚した状態のテオとマルを見て、思わず笑ってしまう。
――椅子やテーブルもあっていいかも。
子供たちは気にしていないようだけれど、お風呂から出てゆっくり休むのにも椅子くらいは欲しい気がする。それか、い草の座布団とかがあったら、いいかもしれない。小上がりに畳敷きがあったら最高だ。
今度、あちらに行った時にでも座布団くらいなら買ってこようか。それとも、村人に作れるか聞いてみるのもいいかもしれない。
そして、子供たちの頬が真っ赤に火照りながら手で煽っている様子を見ていたら、扇風機も欲しくなる。これはギャジー翁にお願いしたら、作ってくれるだろうか。
おかわりを求める声に、皆にコーヒー牛乳を注ぎつつ、気になっていたことをエイデンに聞いてみた。
「そういえば、ここはエイデンたちが作ってくれたみたいだけど……管理はどうなってるの?」
実際、ここにいるのは私たちだけで、管理人らしき人は見当たらない。さすがに、これだけの施設を放置しておくのは危険だろう。掃除もそうだし、温泉のお湯が出てくるところも放っておくと湯の花が詰まったりすると聞いたことがある。
「ここか? ここは精霊たちがいるんでな。奴らに任せている」
「ソ、ソウナンダー」
まさかの精霊大活躍。
そもそも、この温泉はエイデンが作ったものだ。誰でも入れるようなものではないだろう。
エイデンに運んでもらった時間を考えると、そう簡単に来れるようなところでもなさそうだし。うちの村の人にお願いするのは酷だろう。
もしかしたら山裾のほうになら小さい村くらいならあるかもしれないけど。近くには見当たらなかった。もしあったとしても、そう簡単にうちの村人以外に任せるなんて、考えられない。
「五月が言っていた『おんせんりょかん』も作ってみてもいいんだがな。ここに住まわせる者がいないのだ」
へにょりと眉を下げるエイデン。
彼のいう『おんせんりょかん』は、どうも高級旅館をイメージしているようだ。たぶん、大地くん情報だろう。
――いやいやいや、こんな僻地な場所に住みたがる人はいないでしょ。
周辺の荒れ具合もそうだし、簡単に買い出しに行けそうなところでもない。ここを精霊たちに任せる、というのも当然かもしれない。
「旅館は無理でも、この部屋で宿泊できるように、布団とかがあるといいかもね」
「ふとんか」
「それと食事は自分たちで出来るように、村の東屋みたいなのがあったらいいんじゃない?」
「なるほど、なるほど」
「ここを使うのが、私たちだけだったら十分でしょ」
私の頭に浮かんだのは湯治をするような場所だ。
そもそも、貴族がこんなところまで来るわけないから、気軽に使える感じにしておくのがちょうどいい。
せっかくエイデンやドワーフが作り、精霊たちが管理してくれているのだ。私は色々用意してからもう一度来る気になっていた。
飲み終えたコップを集めながら、エイデンにまた連れてきて欲しいと伝えれば、満面の笑みを浮かべて頷いたのだった。





