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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
エイデン温泉(仮)三昧の夏

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第619話 今更、トイレ事情を知る

 村に入ってニコラと子供たちと別れると、私は馬型のゴーレムと一緒にギャジー翁の家の裏手にやってきた。

 前回と同じような場所に停めてある馬車は、前に見たときと見た目は変わっているようには見えなかった。


「……どこが変わったんだろう」


 ポツリと呟いた言葉に、馬車のそばにいたヘンリックさんが、ニヤリと笑う。今日はドワーフたちだけで、ギャジー翁とヴィッツさんの姿は見えない。


「いらっしゃいましたな。サツキ様」

「どうも~」

「さて、まずは中を見てくださいな」


 自信満々に言うヘンリックさんがドアを開ける。外から見える分には、何も変わっていないように見えたのだけれど、いざ、中に入ってみると。


「……なんか奥行、おかしくないです?」


 馬車の外にいたヘンリックさんを見ると、腕を組んで自慢気に笑っている。


「あ。もしかして、大地くんの部屋と同じ?」

「へへへ。そうです。サツキ様のご要望のためには、もうちっと馬車のサイズを大きくしないとなんなくってですね」

「うっ」

「ただ、馬車自体を長くすると、曲がり角の時に上手く曲がれない可能性がありやして」


 大型トラックの長い荷台のことを想像して、納得する。

 そして、この空間拡張をしてくれたのは、エイデンなのだそう。この馬車にヘンリックさんたちを押し込んで連れて行った時に、これが私の物になることを知って、エイデンが奮発したらしい。


 ――エイデン、稲荷さん並みにスゴイヤツだったの!?


 いや、古龍っていう時点で、凄そうだなー、とは思っていたけれど、まさかここまでとは思わなかった。


 車内が拡張された結果、新たに追加された物の一つがトイレだった。

 実は、馬車の振動以上に気になったのが、トイレだった。

 あちらだったら、移動中でも道路沿いにあるコンビニやお店で借りることはできるけど、こっちでは残念ながらそんな便利な環境にはない。

 街道沿いには馬車を停める休憩所もあるにはあるそうなんだけど、トイレはないんだそうだ。自分で穴を掘って……みたいな?(遠い目)

 普通にあちらでもお高めなキャンピングカーにはトイレが付いているモノもあるし、そういうのがあったらいいなぁ、とダメ元で伝えたんだけど。


「……凄い」


 シャワーと同じ並びに設置されたトイレは、簡易トイレと同じような形状になっている。ドワーフたちも利用したことがあるので、それを参考にしたんだろう。


「このトイレは、このボタンを押すと排泄物が下のタンクに落ちて、中で自動で分解されるようになってるんで」

「え」

「ギャジー翁が頑張ったんでさぁ」


 タンクの中には専用の魔法陣が描かれているらしい。

 分解された物は肥料となって別のタンクに溜まる仕組みだそうで、一定量を超えたら、御者台のほうでライトが点く仕組みになっている。


「この辺のアイデアは、ギャジー翁がアース殿から色んな話を聞いて思いついたんだそうです。さすがですなぁ」


 そして、今までなかった魔法陣だったこともあり、これからのトイレ事情がガラリと変わるだろう、とのこと。


「じゃあ、今までは」

「大概はスライムを使ったものが多かったんですがね。ただ、スライムは増え過ぎて処理に困ることもあったんで。しかし、この土地ではスライムは生きていけないみたいで」

「は?」


 スライム。

 ファンタジーでは定番の生き物の一つ。

 私はこちらに住み始めてから一度も見たことはなかった。話題にも出てこないから、この世界には存在してないんだと思っていたが、ちゃんといたらしい。

 なんで、この土地で生きていないのかまではヘンリックさんはわからないそうなので、今度、稲荷さんにでも聞いてみよう。


「それに、サツキ様のトイレを使わせて頂いたら、スライムのトイレは使えなくなりまさぁ」


 掃除しなくてもいいし、排泄物はどうなってるのかわからない。メンテナンスフリーな便利なイグノス様から貰った簡易トイレ。

 今はドワーフたちが利用できるように村に置いてある。


「え、あ、うん」


 ――でも、アレはまたあちらのトイレとも違うんだけどね(遠い目)


 今更、この世界のトイレ事情を知ることになった私なのであった。


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